2003年のしし座流星群の情報

 1998年から騒がれてきた、しし座流星群の情報です。
 残念ながら、今年はあまり多くは流れないと思われます。


●観測速報(11/13〜14)

 11/13〜14の晩に観測しました。最大は9個/時(40分に6個)でした。この晩は1499年(および1466年)に放出された流星物質によるピークが期待されてましたが、果たしてそのピークが観測できたのかどうか、非常に微妙な結果でした。
Nov.13-14/2003
Time          min   Ls      h    Lm  Cl All Leo   HR  CHR  ZHR   Obs.        Rec.
--------------+--+-------+-----+----+--+---+---+----+----+-----+------------+------------
00h50m-01h20m  30  230.81  20.1  5.6  0   4   0    0    0    0  寺久保 一巳 佐藤 幹哉
01h20m-01h50m  30  230.83  26.0  5.6  0   4   2    4    6   21  佐藤 幹哉   佐藤 智子
01h50m-02h20m  30  230.85  32.1  5.2  0   3   2    4    7   19  佐藤 智子   寺久保 一巳
02h20m-02h50m  30  230.88  38.2  5.4  0   2   1    2    3    7  寺久保 一巳 佐藤 幹哉
02h50m-03h30m  40  230.90  45.3  5.4  0  10   6    9   15   25  佐藤 幹哉   佐藤 智子

 一応、3:00〜3:15に5個のしし群が出現し、やや活発化したかな?という印象はありました。他の観測でも若干そのような傾向が見受けられるものがあるのですが、全体的に出現数は低調で、よくわからないというのが実感です。

 なお、11/19〜20は、1733年に放出された流星物質によるピークが期待されました。東京は残念ながら天気が悪く観測できませんでしたが、東北地方では若干多めの出現が観測されました(20個/時)。現時点では、この出現が該当するピークなのかどうかは微妙ですが、通常レベルよりも活発化したことは事実でしょう。


●近年の出現状況

 しし座流星群は、母天体(流星物質を放出する彗星)であるテンペル・タットル彗星が1998年に回帰(太陽・地球に接近)するにあたって、前後数年にわたって大出現が期待されてきました。結果、1999年、2001年、2002年に一時間あたり1000個を越える大出現(流星雨)が観測されました。これまでの主な状況をまとめてみます。

活発な出現日本での状況
1998年東欧などで数百個/時
(火球多し)
50〜100個/時
(やや活発)
1999年ヨーロッパなどで
約2000個/時
100個/時
(意外に活発)
2000年ヨーロッパで約150個/時
アメリカで約300個/時
20〜30個/時
2001年アメリカで約1500個/時
日本で約2000個/時
約2000個/時
(流星雨)
2002年ヨーロッパで約1000個/時
アメリカで約1500個/時
10〜20個/時

※流星出現数は概略値です。

 日本では2001年に見事な流星雨が見られました。

●しし群の予報について

 長年、流星群の予報は難しく、なかなか当たらないものとされてきました。しかしアッシャー氏、ライチネン氏などの計算による予報と、上記の過去数年の出現状況がほぼ一致したことにより、ある程度の予報ができるようになりました。

 その結果、1998年より続いた一連のしし座流星群の活発な出現は、一応、昨年2002年の流星雨をもって、ほぼ終了すると見られております(一部2006年の出現が予報されていますが、あまり多くないと思われております)。
 ※注:なお、しし座流星群が全く流れないということではありません。しし座流星群に属する流星は11月上旬〜下旬に、1時間数個のペースでは流れます。

●今年は基本的には見込み薄

 ということで、今年のしし座流星群については、ほとんど期待できないと思われます。特に満月近い月明かりの影響を受けるため、条件も悪く、ふつうの人にはあまりおすすめできません

 ただし、計算では今年もいくつかの小さなピークが観測されるであろうと、予報されています。一つは11/13晩〜14未明で、もう一つが11/19午後です。このうち日本で観測可能なのは、前者となります。後者は昼間であり、全く見られません。

●周回遅れの古い流星物質によるピーク

 今年観測できるかもしれないと予報されているピークは、彗星から1466〜1533年の古い時期に放出された流星物質によるものです(それ以外のものもありますが、予想される出現数が少ないため、ここでは省略)。またこの流星物質は、彗星本体とはだいぶ離れて運動してきたもので、彗星本体よりも1回帰遅れて地球軌道に接近するものです(カーレースの周回遅れみたいなもの)。このようなピークの予報は今回が初めてなので、実際にどの程度流れるのかは、観測してみないとわかりません。

 どのように予報されているかを大まかにまとめました。また怪鳥もこの事実を知って計算してみましたので、その結果を合わせて掲載します。

 その後1733年トレイルからの放出が、ライチネンさんから上方修正されましたので、追加しました。怪鳥もこのトレイルについて計算しましたので、合わせて時刻を掲載いたします(追加修正11/18)。

放出年ライチネン氏らアッシャー氏らVaubaillon氏怪 鳥
1466年11/13 22時

11/14 4時
11/14 4時50分
1499年11/13 22時15分
11/14 3時20分
11/14 2時17分 11/13 22時00分
11/14 03時05分
1533年11/19 17時11/19 15時30分11/19 16時28分11/19 15時50分
1733年11/20 1時50分11/20 1時40分

※時刻は全て日本時になおしてあります。
※11/13に若干修正いたしました(怪鳥の1499年)。
※11/18に追加いたしました(1733年トレイル)。

参考資料:
・Lyytinen and Tom Van Flandern, EMP 82, 149-166, 2000.
・Vaubaillon他, WGN 31:5, 131-134, 2003.
・Lyytinen, IMO-News Mailing List 1277, 2003.
怪鳥の計算結果詳細はこちら

 以上より、予報は多少ばらけますが、いずれにしても1499年(および1466年)に放出された物質が、11/13晩〜11/14未明に地球と遭遇しそうです。またこれによる流星数は、ZHR100〜120(空の条件のよい場所で一時間あたり40〜60個くらいか?)と予報されています。この出現数についてはあまり確実ではないと思われますが、いずれにしても特に流星好きでない限り、期待を持ってのぞむことはおすすめできないということになります。

※もう少し詳しい話をしてしまうと、今回の流星はちょっと暗めと考えられます。月明かりがあると暗い流星は見づらくなりますし、特に市街地ではほとんど確認できない可能性があります。

 それでも観測してみたいという人には、一応この日(13日)輻射点がのぼってくるのが関東で23時過ぎ、九州で23時45分頃です。ここから明け方(翌14日5時頃)までが観測可能な時間帯となることをご案内します。

 ということで、11/13晩にどのくらい出現するか、そしてその他の晩では、どのくらい出現しないのか、これらを確認するのが今年のしし座流星群のテーマになります。
 とはいってもそんなに平日には観測できないので、一応、当会では11/13晩〜14未明に観測しようと思っています。観測できましたら、また結果を掲載したいと思います。


 一方で、1733年トレイルからの流星数について、ライチネンさんから上方修正されました。このため、怪鳥も追随計算を行い、やはり同じような時間(11/19〜20晩の1:40頃)にトレイルと遭遇することがわかりました。ただし、距離は0.003AUと、これまで流星雨になったトレイル(0.001AU以下)と比べると遠めです。ピークが観測されるのかどうかは、正直微妙です。
 ただし、1466年、1499年、1533年トレイルよりは、放出速度の関係で少し流星の光度分布は明るめになりそうです。果たして実際にはどうなることでしょうか。


●当会の過去のしし群情報


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