1466、1499、1533年放出トレイルからの
しし座流星群の検討

〜2003年〜


[概要]

 しし座流星群は1998年頃より2002年にかけて、比較的新しく放出されたトレイルによる目立った出現が続きました。
 2003年については、この若いトレイルには接近しませんが、ライチネン氏らによって1466〜1499年に放出された古いトレイルに遭遇することが計算されました。
 その後アッシャー氏により、この計算が正しいこと、また1533年放出のトレイルも日を変えて接近することが示されました。
 今回怪鳥は、この内容を確かめるために、数値積分ソフトを使って同様の計算を行って追調査してみました。その結果、極大などは若干異なりますが、似たような結果を得ましたので、下記にまとめます。
(したがって、本内容は怪鳥のオリジナルではありません。ご了承下さい。)

[結果]

 計算には数値積分シミュレーションソフト「NIPE」(内藤博道氏作)を利用して行いました。結果を以下の表にまとめます。

Table.1 2003年接近のトレイルの計算結果

放出年放出速度
(Δa)
位置日付時刻
(JST)
太陽黄経
(2000.0)
距離Δ(AU)予想輻射点速度
(km/s)
αδ
146626.9m/s
(0.274)
降交点
最接近
11/14
11/14
04h50m
02h35m
230.97
230.88
-0.0022
-0.0021
150.7+22.970.6
1499-124.3m/s
(0.252)
降交点
最接近
11/14
11/14
03h05m
08h10m
230.90
231.11
+0.0033
+0.0032
150.8+23.570.4
1499-226.5m/s
(0.275)
降交点
最接近
11/13
11/13
22h00m
23h40m
230.68
230.75
+0.0012
+0.0012
150.6+23.470.5
153327.6m/s
(0.296)
降交点
最接近
11/19
11/19
15h50m
16h25m
236.47
236.50
+0.0006
+0.0006
154.3+21.870.6
173317.5m/s
(0.184)
降交点
最接近
11/20
11/20
01h40m
03h35m
236.88
236.96
+0.0036
+0.0036
154.6+21.270.6

※時刻は5分精度で算出
※2003.11.11 若干訂正
※2003.11.13さらに修正
※2003.11.18さらに1733年を追加

 この結果、1466年および1499年に放出されたトレイルは、通常の極大といわれる日付(11月18日前後)よりもかなり早い11月13〜14日の晩に地球と遭遇することとなりました。1499年放出トレイルは、折れ曲がったU字の格好をしており、その折り返し部分に近い2本のトレイルと遭遇します。一つ目(1499-2)は日本からはやや条件が悪い(輻射点がのぼるのは23時頃)ものの、もう一つ(1499-1)は一応観測できる時間帯にあたります。ただし、一つ目の方が地球には接近します。

 一方、1533年のトレイルは11/19の昼間にあたり、日本からの観測はできません。

 これらの位置関係図を下に示します。


fig.1 地球軌道とトレイルの遭遇(1466年,1499年トレイル)


fig.2 地球軌道とトレイルの遭遇(1533年,1733年トレイル)

 ライチネン氏らの論文(EMP 82-83, 149-166, 2000, Lyytinen and Tom Van Flandern, Predicting the Strength of Leonid Outbursts)によると、1466/1499年のトレイルは、11月13日22時〜14日4時(JST、太陽黄経230.69〜230.78+)で遭遇すると計算されています。
 またアッシャー氏はこの論文について確認の計算をしていて、1499年トレイルが11月13日19時〜14日7時(JST)、1533年トレイルが11月19日15時30分(JST)に遭遇すると発表されています(月刊天文ガイド2003年11月号, P121など)。
 またその後Vaubaillon氏ほかにより、これらの論文がまとめられました(WGN 31:5, 131-134, 2003.)。
 今回の怪鳥の結果も、これらの計算と数時間内の差で一致しました。以下の表にこれらをまとめます。

Table.2 計算結果(予想時刻)の比較

放出年ライチネン氏らアッシャー氏らVaubaillon氏怪 鳥
1466年11/13 22時

11/14 4時
11/14 4時50分
1499年11/13 22時15分
11/14 3時20分
11/14 2時17分 11/13 22時00分
11/14 03時05分
1533年11/19 17時11/19 15時30分11/19 16時28分11/19 15時50分
1733年11/20 1時50分11/20 1時40分

※時刻は日本時(JST)に合わせてあります

 なお、これらのトレイルは、最初に彗星から放出された速度が大きいため(怪鳥の計算で27[m/s]前後)、構成される流星はかなり暗めと考えられます。また放出されてからの経過時間がかなり経っているため、流星物質が拡散している可能性が高いと考えられます。
 このため、これらの予想時刻の出現は、過去1999年、2001年、2002年などに見られた若いトレイルからの大流星雨のような可能性は少ないと推定されます。どのくらいの出現になるかはわかりませんが、多少なりともまとまった(例えばHRで数十くらい)活動が見られればよいかな、と期待しております。

 ちなみに、今回の1499年トレイルに放出速度・接近距離が似かよった条件では、2000年に遭遇した1932年トレイルが挙げられます。このときはZHRで100くらいの小さな極大が観測されています。

 またその後、アッシャー氏から、彼の計算した1733年のトレイルが11/20に接近すること、その予想数が上方に修正されることの情報が流されました。この内容を受けて、怪鳥が計算した結果、ライチネンさんとほぼ同様の時刻が計算されました(1/20 1時50分)。この時間帯は、日本から観測可能な時間帯です。ただし距離が少し遠いため、どの程度流れるのかはわかりません。ライチネン氏は非重力効果を念入りに計算した結果、流星数を上方修正したようですが、当方の計算はこの効果は加わってません。


怪鳥の流星ノートにもどる
FAS府中天文同好会のホームページにもどる