Pons-Winnecke彗星由来の
流星群出現の可能性についての検討
〜2039年の回帰まで〜
[概要]
2002年に回帰するPons-Winnecke彗星(7P/Pons-Winnecke)からの流星物質を、木星の摂動の影響についてシミュレートした。
条件は、彗星の各回帰で近日点通過の瞬間に、進行方向について-30m/s〜30m/s(マイナスは進行と逆方向)の速度で流星物質を放出させた。放出は1819年以降の各近日点通過時とした。
この彗星からの流星群は、過去1916年、1921年、1927年、1998年の突発出現が確認されている。今回のシミュレーションでは計算間隔が長く、当方の計算手法では蓄積誤差が大きいため、これらの突発出現(およびそれ以外の年の不出現)を詳細に説明することはできなかった。このため、全体としての流星物質の分布状況を回帰毎にいくつかのタイプに分類し、概要としてまとめることにした。
[各期間の流星物質分布概要]
詳細は各項目からのリンクを参照
- 1.地球軌道との交差前の安定期間(〜1869年)
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近日点が地球軌道よりもかなり内側(q < 0.8AU)で安定しており、放出された流星物質も地球軌道と交差しない。
- 2.交差前の遷移期間(〜1892年)
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1870年、1882年に木星に接近し、地球軌道付近へと軌道が遷移している期間。一部物質は地球軌道と交差し始める。
- 3.地球軌道との交差期間(〜1927年)
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2公転毎に木星と接近し、近日点距離が大きくなる。流星物質が地球軌道付近でうねるように交差し、物質の回帰のタイミングによっては、流星出現が大いに期待される期間。
- 4.地球軌道の外側へ遷移する期間(〜1970年)
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引き続き2公転毎に木星と接近し、近日点距離がさらに大きくなる期間。近日点距離は徐々に大きくなり(q = 1.10 → 1.25)、新たに放出された流星物質は地球軌道と交差しなくなる。ただし古く放出された流星物質の一部は地球軌道付近に残る。
- 5.一部の物質が交差し、流星出現の可能性がある期間(〜2008年)
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彗星の近日点距離は地球軌道の外側で安定し(q = 約1.25)、新しく放出された流星物質は地球軌道と交差しない。しかし、彗星から大きく遅れて公転する一部の流星物質が、タイミング良く地球通過時期に交差するように回帰するため、流星出現の可能性がある。
- 6.交差していた物質の分布が乱れる期間(〜2021年)
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彗星の近日点距離は地球軌道の外側で安定したまま。またタイミング良く地球通過時期に交差していた流星物質が木星に接近し、地球軌道との交差が乱れる期間。流星出現の可能性が低い。
- 7.再び交差する期間(2027年〜)
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木星と彗星が接近するようになり、近日点距離が小さくなって、再び地球軌道と交差し始める。このため、比較的新しく放出された流星物質も地球軌道と交差するようになる。
特に2039年回帰時には、大出現の可能性がある(2045年についてもかなり可能性が高いが未計算)。
[軌道計算の概要]
市販ソフト「Excel」のワークシートを利用して行った。シミュレート間隔は1日おきで、数値積分の手法などは用いず、木星および太陽との重力の影響のみで運動させた。このため、木星以外の惑星の摂動は含まれない。
また、ある程度の計算誤差が生じている。その値はあらかじめ計算されたPons-Winnecke彗星の軌道について、最大、T=15日、q=0.01AUである。この影響は彗星軌道要素での計算を元に、2回帰おきに修正し、誤差を補正している(補正方法が正しいかどうかは、現在のところ未検討である)。
さらに、光圧などの影響も考慮していない(木星の摂動に対して、影響はかなり小さいと考えられるため)。
[参考文献(リンク)]
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