1998年のしし座流星群の情報

 本ページは、しし座流星群の極大前に掲載した事前情報です。


 11月18日の明け方、流星雨となる可能性があるしし座流星群(しし群)の情報です。


 このページでは、しし座流星群の概要を説明してます。この他に以下のようなページを用意してますので、合わせてご覧下さい。


<今年が注目されるわけ>

 しし座流星群は毎年見られる流星群の一つです。しかしこの群は、約33年毎に大流星雨となる可能性がある群として有名です。
 前回は1966年にアメリカで大出現が観測されました。諸説あるものの1秒間に約40個の流星が見られたとされてます。1時間あたりに直すと実に約15万にものぼります。またその前年の1965年には、日本でも1時間あたり数百個の流星が見られたそうです。
 そして今回は1998〜99年にそのピークが来るであろうと考えられてます。


<母天体が33年周期>

 流星は、砂粒のような粒子が地球の大気に飛び込んできて、大気との摩擦でさまざまなことが起こり、光が放たれて見られるものです。しし座流星群は、テンペル・タットル彗星から放出された砂粒が、流星のもとになっています。

 テンペル・タットル彗星は約33年で一回りして、太陽の近く、つまりは地球軌道の近くに戻ってきます。太陽に近づくと彗星が熱せられ、凍っていたガスが吹き出ますが、この時に砂粒なども一緒に放出されます。
 放出された砂粒は、彗星と同じ様な軌道を描いて、少しずつ彗星から離れていきます。彗星が何周も太陽のまわりを回ると、徐々に軌道上に砂粒の流れの帯ができあがっていきます。

 しかし母天体である彗星の近くには非常に濃密に砂粒が分布しており、たまたまこの中を地球が通過すると大流星雨になるわけです。テンペル・タットル彗星は今年の2月に33年ぶりに太陽に接近しましたので、昨年から来年あたりにかけて、大出現する時があるのではないかと期待されてるのです。


<彗星との位置関係>

 テンペル・タットル彗星は、今年2月28日頃、太陽に最も近づきました。その後3月5日頃に地球の軌道のごく近くを横切り、現在は再び遠ざかってるところです(右上図)。
 一方、地球が今年この彗星軌道の近くを通過するのは、その約260日後の11月18日頃となります。彗星よりもやや遅れて回っている砂粒の帯の中を通過することになります。

 過去のデータによると、彗星よりも遅れる帯の中を通過する方が流星雨となる可能性が高いようで、今年と来年に流星雨が期待されてます。


<大出現は短時間>

 先のジャコビニ群でもそうでしたが、大出現の時間は非常に短く、もし流星雨が見られてもその時間は1時間に満たない程度と考えられてます。しかも残念ながらその極大時刻を予想することは非常に難しく、ジャコビニ群でも多くの予報ははずれました。

 今年、彗星の軌道自体に地球が接近するのは11月17日23時頃で、その距離は約120万kmです。これは月までの距離の約3倍の距離に相当します。
 実際には、流星物質(砂粒)は彗星と若干異なる軌道を描いていると考えられ、さまざまな研究からは18日の2時〜6時頃に極大となる予想が多いです。日本では輻射点がのぼる23時頃〜夜明けの5時半頃まで観測が可能なので、予想通りであれば条件よく観測できることになります。ヨーロッパの観測者の中には、日本や中国への遠征を考えてるグループもあるそうです。

 しかし予報がはずれて日本の昼間に極大となり、ヨーロッパやアメリカで流星雨が観測されるかもしれません。これは実際にその日を迎えてみないとわからないのです。


<出現数の予想は困難>

 極大時刻の予想と同様、出現数の予想もとても困難です。現在の段階では、1時間に百個程度は流れるだろうという意見が大半です。周期の33年のうち、20年くらいは1時間に10個以下という低調な出現のしし群ですから、これでも十分多い数字ではあるのですが。もっと流れて欲しいというのは、正直なところです。
 もちろん1時間に数千個という予想もあります。逆に数十個程度であろうという予想もないわけじゃありません。また極大がずれてしまえば、地球上のどこかでこのような出現があっても、日本では1時間に数十個だった、ということもあり得ます。

 いずれにしても今年観測することによって、来年の予想や、あるいは33年後の予想に役立つことは間違いありません。またどうなるかわからないから、天文現象としての面白みも増すとも言えます。色々な可能性想定して臨む必要がありそうです。
 また市街地など、明るい流星しか見られない場合は、残念ながら数分の1から十分の1程度に減ってしまいます(それでも大出現となれば、見応えのある光景になることでしょう)。


<観測は23時から明け方まで>

 しし座流星群は、流れた流星の経路を逆にたどると、しし座の大がまと呼ばれる付近に集まります。これを輻射点(ふくしゃてん、最近は放射点:ほうしゃてんと言う)と呼び、地上から見た場合に流星が飛び込んでくる方向を示してます。このため輻射点(しし座)が地平線の下にあるうちは、流れる流星も地平線の下となり、流星は見られません。
 輻射点は23時頃、地平線から上ってきますので、この時刻から明け方まで観測することになります。そして運がよければこの時間中のどこかで、流星雨が見られるかもしれないと言うことになります。


<しし群の特徴>

 しし群の特徴は、流星自体の速さにありまる、数ある流星群の中で最速です。視野の端っこに流れた時などは、意識がそこに行くときにはもう流れ終わって消えてるという、ともかくそれくらい速いです。

 また、明るい流星が多いことも特徴です。木星や金星よりも明るい、火球と呼ばれる流星も多く見られます。

 また、流星が流れたあとに、痕(こん)と呼ばれる雲のようなものが残ることがありますが、しし群はこの痕を残す率(有痕率)が高いことでも有名です。このような痕が数分間も見えてることもあります。

 1995年、当会山崎氏が撮影した「しし群の痕」の写真はこちら


<まとめ>

 ということで、今年の11月17〜18日にはしし座流星群に注目が集まります。きっとテレビや新聞・雑誌などでも多く報道されることでしょう。もちろん観測にのぞまなければ大出現も見られませんから、多くの人に注目してもらい、そしてたくさんの人が「流星雨」の体験をしてもらえたらいいな、と思います。

 しかしながら、本当に流れ星が雨のように降る「流星雨」(最近は「流星嵐」などとも表現されますが)が見られるかどうかは、実際にその日をむかえてみないとわかりません。半分は、そういう大出現を期待しつつも、もし流れなくても「流星の予想は難しいんだな」と冷静に取り組むことも必要でしょう。

 とは言いつつも、当会は平日にも関わらず、多くのメンバーで観測にのぞむ予定です。良い観測ができれば、結果はまたこちらに掲載する予定にしております。もちろん「しし群大出現」という内容を掲載できればいいな〜と思ってます。

 ぜひぜひ、たくさん流れることを願いましょう!
 そして天気が良く、多くの場所で良い観測ができることを期待してます。


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