ペルセウス座流星群のトレイルの検討

〜2004年を中心に〜


[概要]

 ペルセウス座流星群の母天体は、スイフト・タットル彗星(109P)です。この彗星は近年では1862年、1992年と回帰しています。そして1862年の回帰の際に放出されたダストによるトレイルが、2004年に地球に接近し、流星数が増加するとの予測がライチネン氏によりされております(このページなど参照のこと)。
 ここでは、このライチネン氏の研究結果を参考に、怪鳥が計算した結果を掲載いたします。

※計算はおもに「Integrat.exe」(Project Pluto)を使用し、水星〜冥王星の9惑星、月、小惑星(1,2,4)からの摂動を計算しました。太陽の光圧の影響は計算されていません。


[1回帰トレイルの分布結果]

 図1に1回帰トレイル(1862年放出)の分布を示す。
 方法は、近日点通過の際に、彗星の運動方向とその逆方向にダストを放出させ、その分布を計算した。



図1 1回帰トレイルの各年の分布

 トレイルは、通常の年は1.02[AU]よりも遠くに位置し、地球軌道よりも外側(グラフの上側)に分布している。しかし、土星と木星の影響を受ける軌道であり、2つの惑星と遭遇した後に回帰する際は、地球軌道付近、あるいは地球軌道よりもかなり内側にトレイルがずれ込むことが判明した。
 2004年の場合は、前年の2003年に木星の摂動を受けてトレイルが内側にずれ込み、地球軌道と接近する。

 表1に、摂動の影響を受ける年のトレイルのデータを示す。

表1 摂動の影響のある年の1回帰トレイルの計算結果

放出速度
[m/s]
日付時刻
(JST)
太陽黄経距離
[AU]
輻射点速度
[km/s]
αδ
-30.281979/08/1221:42139.5075-0.000645.9157.5059.49
-27.791980/08/1202:51139.4655-0.009345.7757.7659.57
-25.361981/08/1207:45139.4141+0.000545.8557.8459.29
-0.621992/08/1204:59139.4800-0.001845.9057.6759.47
22.662004/08/1205:49139.4398-0.001345.8657.6659.49
31.422009/08/1213:56139.4981-0.003445.9557.6859.54

※1980年は内側に入り込み過ぎて地球軌道からは遠い。

 2004年の場合は、トレイルとの距離が-0.0013[AU]まで接近し、このトレイルからの出現が期待される。
 またこの他、1979年、1981年、1992年、2009年にもこのトレイルからの出現の可能性がうかがわれた。
 (※注:過去の状況を検討することは、今年の出現状況の予測につながると考えられるが、現段階ではまだ詳細まで検討できていない。)

1回帰トレイルが受ける摂動の状況の詳細(別ページ・8/5追加)

[2004年に回帰するトレイルの分布結果]

 前項より、2004年には木星の摂動を受け、トレイルが通常よりも地球軌道側に接近することが判明した。これは1回帰トレイルに限らず、その他のトレイルについても同様である。
 今回、2004年に回帰するトレイルを5回帰まで計算した。これを表2にまとめ、またその分布を図2に示した。

表2 2004年に回帰するトレイルのデータ

回帰放出年放出速度
[m/s]
日付時刻
(JST)
太陽黄経距離
[AU]
輻射点速度
[km/s]
αδ
1回帰186222.662004/08/1205:49139.4398-0.001345.8657.6659.49
2回帰173719.822004/08/1204:47139.3985+0.016446.0557.3059.24
3回帰161011.642004/08/1209:12139.5750+0.005645.8557.4259.45
4回帰14794.852004/08/1212:41139.7142-0.005445.8057.5759.64
5回帰13482.232004/08/1214:30139.7869-0.003245.8557.6159.58


図2 2004年のトレイルの分布

 最も地球軌道に接近するトレイルは、1回帰トレイルの-0.0013[AU]であった。しかし放出速度は22.66[m/s]と大きいため、流星の光度が全体的に暗い可能性がある。

 3〜5回帰トレイルは0.0056〜-0.0032[AU]とその距離はやや大きいが、ダストの分布の広がりいかんでは流星が出現する可能性がある。これらは放出速度が小さいため、やや明るい流星となることがうかがわれる。ただし、1611年に木星(3回帰を除く)、1740年に土星・1742年に木星、1872年に木星、2003年に木星と、約130年ごとの回帰のたびに摂動を受けている部分であり、ダストの分布自体がやや拡散気味である。したがって3〜5回帰のトレイルからの極大は、流星数の増加がわずかに留まる可能性が高い。元来ペルセウス座流星群は、ベースラインの出現数が多いため、これらの極大を観測から捉えることは難しいかもしれない。

 一方、2回帰トレイルは、2003年の木星からの摂動だけしか受けていないことにより、あまり地球に接近しない結果となった。

 なお、これらのトレイルはほとんどが日本の昼間にあたり、眼視的な観測ができないのが残念である(2回帰トレイルは西日本でかろうじて観測可能だが、条件そのものが悪い)。


[月への1回帰トレイルの接近](8/2追加)

 地球にトレイルが接近する場合、当然月にも接近する。今回の1回帰トレイルについては表3の通りである。またその様子を図3に示す。

表3 1回帰トレイルの月面との接近

日付時刻
(JST)
距離太陽黄経
(月)
8/1203:07+0.00039[AU]
59,000[km]
139.4448


図3 1回帰トレイルの月との接近

※月は地球軌道面より0.0002[AU](約3万km)上方に位置する。このためトレイルの位置が若干ずれる。

 月では地球よりも2時間弱早く接近することになる。またその距離は地球のそれの3分の1以下で、条件は好い。月面では大気が無いため流星とはならないが、大火球クラスの流星物質が月面に衝突した場合、(地球から観測して)4〜6等に発光することが期待されるそうである。このため、上記時間帯に月の欠けている部分(暗部)をビデオ撮影すると、流星物質の衝突による発光を捉えられる可能性がある。(ただし、1回帰トレイルは放出速度が速いため、火球クラスの流星は少ないかもしれない。これは観測してみないとわからない。)

※詳細は以下のリンクを参照してください。


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