ときおり、とても明るく輝くことのある人工衛星の話題です。
2021年現在、全ての運用衛星が新しいタイプに移行したため、現在は輝かなくなりました。
<概 要>
イリジウム衛星と呼ばれているのは、国際企業イリジウム社による衛星携帯電話システムのために打ち上げられた人工衛星です。
このシステムは、66個の低軌道周回衛星を使って地球上全体での通信をカバーするというものです。ちなみに、当初の予定は77個だったそうで、そこで原子番号77のイリジウム(Ir)から、名付けられたそうです。
<ニュース:ロシアの衛星と衝突>(2009.2)
通称「Iridium33」と呼ばれるイリジウム衛星が、ロシアの人工衛星(コスモス2251)と衝突したそうです。人工衛星同士の衝突は初めてだそうです。破片が数百個飛び散ったと報道されています。
この衛星については、過去何回かフレア現象を見たことがあるようですが、特に画像などを撮影したことは無いようです。
- イリジウムフレア(Ir53)の動画
ニュースで、このページを訪問される人が増えたようなので、過去のイリジウムフレアの動画を取り込んでアップしてみました。今回衝突した衛星とは別の衛星によるものです。1998年7月21日撮影(wmv形式、17秒、4.1MB)。
<運用困難からサービス停止、そして再利用?>(2001.1)
日本では1998年秋の試験運用に続き、1999年からサービスが始まりました。人気バラエティ番組の電波少年でイリジウムページャーが使われるなど知名度こそ上がりましたが、世界的にも普及数が見込みを大幅に下回ったことで経営環境が悪化、米イリジウム社は1999年8月に再建手続きをとりました。
その後も有望な資金支援が受けられず、2000年3月18日、イリジウムのサービスは停止になりました。新たな活用先が見つからない限り、衛星は大気圏へと落下させることになる状況でした。
その後いくつかの再建話が出ては消え、出ては消え・・・という状態が続いたのですが、現段階では再利用先が決まったらしい?といった状態です。
このため、少なくとも2001年7月現在(運用外の衛星を除き)姿勢制御はしっかりされているようで、予想通りイリジウムフレアは観測されてます(但し、経験的には軌道変化が大きくなったような気がします。1カ月後の予報などは以前の正式運用中よりも、ずれが大きくなりました)。
<軌道など>
人工衛星は、高度約780km上空を「極軌道」という軌道で回っています。1グループ11個が6グループあり、1グループは同じ軌道面を約9分間隔で回るようです(一部予備の衛星があります)。99年6月までに88個の衛星が打ち上げられ、トラブルがあったいくつかの衛星を除くものが姿勢制御されてるようです。軌道面は図のように、ミカンの房と房の間に衛星が位置するような感じになります。また一周は約100分になります。
トラブルがあったり、予備衛星で姿勢制御されてなかったりする衛星は、予報通りに見られないものがあります。これらの一部は1〜数秒間隔で明滅します。
<見え方>
通常、このイリジウム衛星は6等で見られるそうです。これは肉眼で見える限界近くの明るさなので、肉眼で見つけるのは困難そうです。
ところが、この衛星にはアンテナがついていて、このアンテナが太陽光を反射するような位置に来たときには、非常に明るく見られるそうです。その光度はなんと-7等。明けの明星や宵の明星の金星が-4等ですから、それよりも10〜20倍も明るく見られるのです。このような閃光現象は、「Iridium Flares(イリジウムフレア)」と呼ばれているようです。つまり数秒から十数秒でゆっくり動きながら増光し、そしてまた同じくらいかけて減光していきます。
この現象が見られる地域(つまり反射した太陽光が地上に映る場所)は、当然比較的限られた範囲になり、中心から離れるにつれて増光が小さく(例えば-2等とか1等とかに)なります。
衛星は地心方向に対して正確に姿勢制御されているため、観測位置、衛星の位置、アンテナ角度、太陽の位置からフレア(閃光)現象は予報が可能です。観測してみた結果、比較的予報通りに起こるようです(後述)。
右の画像は98年5月22日、20時過ぎのイリジウムフレア(ビデオ映像を2秒おきに合成)
<こんなことが考えられる?!>
なお、この閃光現象ですが、
- 人工衛星の見え方を楽しむ
- 人工衛星が横切るいつもとちょっと違った星野写真を撮影する
という場合には楽しいと思います。ところが、
- せっかく星野写真を撮影したのに変なものが写り込んでしまった(こういうこだわりの方はいらっしゃいます)
- 撮影中他のことをしていてこの現象に気がつかず、あとで現像して大流星(火球)が写ったと勘違いして大騒ぎになる
- あまり詳しくない人が見たとき、UFOと勘違いする
なんてこともありそうですので、個人的にはこの現象について知っておいて損はないと思います。
<いつ見られるの?(予報について)>
だいたい、1晩に1回くらいは1等程度までの増光が見られるようです。-4等より明るい閃光現象は数日に1度程度です。これらは、前述の通り予報が可能で、「Heavens-Above」を利用するのが便利です。手順は、
- 「Heavens-Above」へアクセスする。
- 「Selecting from our huge database」または「Entering your coordinates manually」から観測地を選定(入力)−databaseの中にはなんと「府中(fuchu)」もきちんとありました
- 「Heavens-Above Main Page」にたどり着いたら、「Iridium Flares」の下の「for the next 24 hours」(今後24時間)、「for the next 7 days」(今後7日間)、「over the past 48 hours」(過去48時間)、「Daytime flares for 7 days」(今後7日間の昼間のフレア)を選択する。
です。経緯度を代入した「Heavens-Above Main Page」をブックマーク(お気に入り)に追加しておくと、アクセスが便利です。
なお、怪鳥はお気軽操作を目指して、日本地図をクリックすると緯度・経度を割り出して上記サイトにアクセスするページを作りました。多少の誤差が見込まれますが、よろしかったらご利用下さい(Chris Peatさん、公開の許可ありがとうございました)。
<お薦めリンク>
- ・軌道要素
iridium.txt
- NORADのイリジウム衛星だけの軌道要素。怪鳥は最近これを使用しています。
- ・情報&リンク集
イリジウム衛星を見よう
-
三島さんの人工衛星を見ようの中のページです。
-
Status for Iridium payloads(英語)
-
姿勢制御出来ていない衛星など、各イリジウム衛星の状況がわかります。
<明るいフレアの観測報告>
時々気まぐれで観測しています。
2007年
- 07.04.21 19時34分頃 明るさ不明のフレア(Iridium62)
星空観望会中に偶然目撃。雲間で明るさは不明ですが、かなり明るかったです。
2005年
- 04.05.27 26時25分頃 -4等のフレア(Iridium47)
金星なみに明るかったです。
- 05.05.17 19時45分頃 -6等のフレア(Iridium61)
木星より明るく輝きました。
2004年
- 04.10.28 29時19分頃 -4等のフレア(Iridium50)
金星よりやや暗く見られました。
- 04.10.14 28時32分頃 -4等のフレア(Iridium37)
金星よりやや明るく輝きました。
- 04.09.15 28時57分頃 -4等のフレア(Iridium32)
- 04.01.03 29時15分頃 -6等のフレア(Iridium30)
偶然目撃しました。
2003年
- 03.12.17 18時16分頃 -6等のフレア(Iridium95)
連続してみられました。
- 03.12.17 18時15分頃 -4等のフレア(Iridium59)
薄もやの中で見られました。
- 03.12.16 28時52分頃 -5等のフレア(Iridium23)
下の衛星と連続してみられました。黄色く光りました。
- 03.12.16 28時50分頃 -4等のフレア(Iridium20)
運用外衛星のフレア。
- 03.10.15 18時43分頃 -7等のフレア(Iridium56)
雲が多かったのですが、そのすきまにちょうど当たりラッキーでした。
- 03.9.30 18時10分頃 -6等のフレア(Iridium56)
非常に明るく見えたのですが、最近金星を見ていないので、光度の見積もりが難しいです。
- 03.5.24 26時58分頃 -4等のフレア(Iridium5)
もやの中で苦しかったのですが、明るい光点を確認しました。
- 03.3.2 29時32分頃 -7等のフレア(Iridium70)
薄雲の中にもかかわらず、晴れ間の金星とほぼ同じ程度の強烈な輝きでした。
- 03.2.17 18時25分頃 -6等のフレア(Iridium74)
黄色く明るいフレアが見られました。
- 03.1.29 28時45分頃 -5等のフレア(Iridium83)
明けの明星よりも少し明るく見えました。
2002年
- 02.7.11 26時39分頃 -6等のフレア(Iridium65)
地球の影に近く、やや黄色く見えました。
- 02.7.5 19時26分頃 -5等のフレア(Iridium55)
薄明・薄雲という悪条件でしたがよく見えました。
- 02.3.15 18時42分頃 -4等のフレア(Iridium33)
久々の観察。
- 02.1.30 6時01分頃 -6等のフレア(Iridium74)
なかなか強烈に輝きました。
- 02.1.21 20時00分頃 -5等のフレア(Iridium66)
- 02.1.21 18時08分頃 -5等のフレア(Iridium54)
フィンランド・サーリセルカにて。残念ながらオーロラと一緒には見られませんでした。
2001年
- 01.7.12 27時33分頃 -7等のフレア (Iridium47)
梅雨明けの透明度の良い空で強烈に輝きました。
- 01.5.31 27時04分頃 -5等のフレア (Iridium77)
運用外の衛星でしたが、予報通り見られました。
- 01.5.12 19時38分頃 -5等のフレア (Iridium67)
星空観測会でついに観望することができました。
- 01.5.11 26時31分頃 -5等のフレア (Iridium12)
- 01.4.12 18時07分頃 -8等?のフレア (Iridium37)
日没前でしたが、はっきりと確認できました。
- 01.3. 5 19時18分頃 -7等のフレア (Iridium8)
影との境界近くか、黄色く光りました。
- 01.2.17 29時13分頃 -8等のフレア (Iridium47)
雲の中でも強烈に光りました。
- 01.1.30 18時29分頃 -5等のフレア (Iridium26)
- 01.1.23 29時31分頃 -6等のフレア (Iridium63)
2000年
- 00.6.7 26時17分頃 -5等のフレア (Iridium14)
- 00.6.7 26時16分頃 -6等のフレア (Iridium68)
- 00.6.7 25時50分頃 -5等のフレア (Iridium39)
短時間に3度の明るいフレアを確認しました。
- 00.5.25 27時05分頃 -4等のフレア (Iridium66)
サービスが終了してだいぶ経ちますが、まだ見られるようです。
- 00.3.28 26時52分頃 -3等のフレア (Iridium60)
初の海外での観測。オーロラ観測地、カナダのフォートマクマレイにて。
- 00.1.27 30時28分頃 -3等のフレア (Iridium28)
- 99.12.31 29時14分頃 -4等のフレア (Iridium62)
30時間制で書くと99年ですが、日付的には2000年の初観測。
1999年
- 99.12.3 18時28分頃 -7等のフレア (Iridium15)
黄色いフレア。久々に写真撮影にチャレンジしました。
- 99.11.4 29時25分頃 -6等のフレア (Iridium81)
久々のイリジウムフレア。金星よりも明るく輝きました。
- 99.9.3 27時29分頃 -6等?のフレア (Iridium34)
また薄雲の中でのフレアでした。
- 99.8.27 19時10分頃 -8等?のフレア (Iridium45)
雲の中なので光度ははっきりしませんが、強烈に輝きました。
- 99.7.7 26時41分頃 -5等のフレア (Iridium60)
わりと黄色く輝きました。七夕の晩でしたね。
- 99.7.1 27時09分頃 -5等のフレア (Iridium29)
月明かりの中での明るいフレアでした。
- 99.6.22 26時08分頃 -7等のフレア (Iridium47)
薄雲の中でしたが、強烈に光りました。
- 99.6.21 21時24分頃 -5等のフレア (Iridium13)
比較的西空の低空でしたが、もやに負けず明るかったです。
- 99.6.13 25時19分頃 -5等のフレア (Iridium63)
上空の影の境界近くのフレアで、黄色く輝きました(夕焼けと同じで、衛星を照らす太陽光が地球大気を長く通過しため、黄色っぽくなってると思われます)。
- 99.6.4 27時30分頃 -2等のフレア (Iridium24)
姿勢制御されてないようで、7秒くらいの間隔をおいて閃光しました。最大時で-2等ですが、前後は見えないので印象的でした。
- 99.5.30 27時52分頃 -8.5等のフレア (Iridium3)
リトルが観測したフレア。雲を通して強烈に輝いたそうです。
- 99.5.10 27時41分頃 -4等のフレア (Iridium75)
久々に明るめのフレアでした。
- 99.1.13 29時04分頃 -7等のフレア (Iridium25)
明け方のフレアは比較する星がなくて困りましたが、非常に明るいフレアでした。
- 99.1.12 17時03分頃 -6等のフレア (Iridium46)
まだかなり明るい空だったのですが、はっきりと輝きました。
- 99.1.9 18時48分頃 -7等のフレア (Iridium33)
当会の編集のメンバーで見ました。今まで見た中で最も明るいフレアでしょう。ちょっと黄色っぽかったです。
1998年
- 98.12.30 17時54分頃 -6等のフレア (Iridium48)
当会の忘年会に出かけるときに偶然見かけたフレアです。知らないで見たら、やっぱりびっくりしました(^^;。
- 98.12.1 18時19分頃 -5等のフレア (Iridium70)
府中の自宅で確認しました。南の空で明るく、また動きが小さかったので、知らない人が見たら何かと思うでしょうね。
- 98.11.25 29時15分頃 -6等のフレア (Iridium38)
府中の自宅で確認。久々にかなり明るいフレアでした。黄色く見られたのが印象的でした。
- 98.11.13 29時22分頃 -4等のフレア (Iridium82)
- 98.11.13 29時59分頃 -4等のフレア (Iridium40)
82は自宅付近の空き地で、40は自宅で確認しました。この日はこれら以外にも4個のイリジウムフレアを確認しました。
- 98.8.5 21時12分頃 -4〜-5等のフレア (Iridium69)
長崎の旅行中、ホテルの窓から確認しました。地平高度は約5度以下と低空でしたが、はっきり見られました。
- 98.7.27 26時11分頃 -4等のフレア (Iridium53)
偶然にもまたまたNo.53でした。行き交う雲のちょうどすきまで光り、ラッキーでした。
- 98.7.20 26時45分頃 -4等のフレア (Iridium53)
府中の自宅で見ました。たまたま5.28に見た衛星と同じ衛星でした。
- 98.6.16 20時17分頃 -4〜-5等のフレア (Iridium17)
府中の自宅で見ました。比較的透明度が好く、明るさが際だって見えました。
- 98.5.30 27時11分頃 -5〜-6等のフレア (Iridium30)
たまたま通過中の中央道初狩P.A.でFAS事務部の仲間と見ました。結構明るかったです。
- 98.5.28 20時00分頃 -6〜-7等のフレア (Iridium53)
怪鳥が初めて見たイリジウムフレアです。ビデオ撮影にも成功!(動画があります)。
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