小惑星ミルラによるふたご座γ星の食

(91.1.13)

 本現象は1991年1月13日、小惑星ミルラ(約12等)によってふたご座γ星(1.9等)が食されたものです(FAS府中天文同好会と府中市郷土の森の共同観測)。恒星が1.9等という肉眼でも見える明るさだったことは、非常に珍しいそうです。


現象の概要

 この現象は、当初九州南部を掩蔽帯が通過すると予報されてました。隠す小惑星ミルラはその明るさから約100km程度と推定され、関東地方では可能性が低いとされてましたが、隠されるふたご座γ星が1.9等と明るいため、FAS府中天文同好会でも現象を観測することにしました。予報時刻は20h59m〜21h00m(JST)、予報最大継続時間は約10秒でした。

 当日は1時間前まではどん曇りの空でしたが、その後回復し、1.9等のγ星は肉眼でも明るく見られました。集まった者は各々肉眼と、観測用のテレビモニタをにらんで現象時刻を待ちました。

 そしてJJYを聞きながら間もなく21時になるという時、冬の明るい星座が輝く空の中で、この星だけが突然消えました。集まった者はみんな歓声とも悲鳴ともつかぬような声をあげて驚き、そしてあっという間にまた現れるのを目撃しました。

 「5秒くらいだったかなぁ」と言う声の中、しばらく録画を続けた後ビデオを再生。その減光時刻は約10秒もありました。やはり時間は短く感じるもの?

 こうして当会にとって初めて挑戦した小惑星による恒星の食の観測は、なんと一度目にしてビデオにまで収めるという大成功を果たしたのでした。

 なお、この現象は当会の他にも関東周辺各地で観測され、佐藤勲さん、相馬充さん、広瀬敏夫さんにより観測がまとめられ、小惑星がほぼ楕円の断面をしていたことが判明しました。また当会では観測できませんでしたが、一部では伴星(約7.5等)の出現が捉えられたようです。この結果は論文としてまとめられ、Astronomical Journal Vol.105 No.4(1993) p.1553に掲載されました。


ビデオからのキャプチャ画像

画像の範囲

潜入 20h59m48.8s

 潜入前

    ↓
 潜入後

出現 20h59m57.7s

 出現前

    ↓
 出現中間

    ↓
 出現後
(以上、継続時間、8.9秒)

 なお、ビデオでは潜入時・出現時とも1〜2コマの中間光度が見られます(上の画像ではキャプチャ時の都合で出現時だけ示してあります)。これが現象によるものか、I.I.等の機材によるものかは微妙です。

AVIファイルによる動画はこちら
 160×120サイズ 16秒 ga-gem.avi (526KB)

なお動画は4コマ/秒なので、雰囲気だけ伝わればいいかなという程度です。
(出現1秒後に20h59m59sのJJYの変調信号が入ります。)

撮影データ

光 学 系:135mmレンズ+I.I.+白黒CCDカメラ(I.I.、CCDは浜松フォトニクス製)
撮 影 地:東京都府中市南町 府中市郷土の森博物館
       北緯35度39分17秒 東経139度28分38秒 海抜45m
観 測 者:佐藤、漆畑、菊地、市川、伊藤(以上FAS府中天文同好会)
      本間、加藤、馬場(以上府中市郷土の森)


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