怪鳥の流星ノート・要注意情報
●本田・ムルコス・パジュサコバ彗星関連群
(母天体:Honda-Mrkos-Pajdusakova彗星 45P/Honda-Mrkos-Pajdusakova)
ロシアのセルゲイ(Sergey Shanov)さんから、今年、同彗星から1959年に放出された場合のトレイルが地球に接近するとの情報をメールで頂きました。この彗星は、7月下旬〜8月上旬に活動するやぎ座群の母天体候補の彗星です。
一方で、やぎ座群がやや活発であるとの情報もあるため、急きょ、当方でもこのトレイルを計算してみました。
なお、1959年以外に放出された場合については、現時点では計算しておりませんのでご注意下さい。
<2005年> 2005.7.31掲載
放出年 | Date(UT) | Time | LS(2000) | Δr(AU) | 放出速度 (m/s) | Δa | fM | α | δ | V(km/s) | 備考 |
1959 | 2005/08/10.39 | 09:16 | 137.774 | +0.037 | -9.1008 | -0.010 | 0.027 | 325.04 | -11.10 | 25.77 | 降交点での接近 |
1959 | 2005/08/12.65 | 15:36*1 | 139.938 | 0.0017 | -9.1040 | -0.010 | 0.026 | 325.02 | -11.11 | 25.84 | 最接近地点 |
*1: この時刻には数分の誤差が含まれます。
- 1959年放出の場合のダストトレイルは、確かに今年地球軌道に接近傾向にある。
- ただし降交点では、上表の一段目のように+0.037AUと距離がかなり大きく、あまり接近しない。
- 一方で、このダストトレイルは、軌道傾斜角が約2.6度と小さい。このため、地球と最接近する部分は、降交点以外の場所となる。この場合、地球と遭遇するタイミングまで考慮した際の最接近地点は、上表の2段目となり、0.0017AUと比較的接近することがわかった。
- 放出速度は約-9.1m/sと(絶対値は)やや大きいが、流星出現の可能性のある速度である。
- トレイルのfM値は0.026〜0.027と、37〜38公転した場合と同等となり、摂動の影響でやや引き延ばされている。(実際は9公転)
- 過去に同彗星のトレイルが接近していた例が(現時点では)計算されていないため、どの程度の出現になるかは、全く未知数である。ただし条件からは、大出現となる可能性は低いと推測される。
- しかし、ダストトレイルの広がりを考えると、流星が出現する可能性はあると思われる。やぎ座群の場合、例年、1時間あたり数個程度の出現なので、これよりも活発となる可能性は考えられる。実際はみずがめ座群など輻射点が近い流星群もあり、かなりの数が出現しないと、検出は難しいかもしれない。
- 前述の通り、軌道傾斜角が大変小さいため、上記時刻に関わらず数時間(あるいは数日間?)、流星出現が継続する可能性がある。
- 予想される輻射点は、やぎ群よりもやや東よりである。
なお、当日はちょうどペルセウス座流星群の極大の頃です。しかし、このやぎ座からの流星群が流れていないか、ちょっと注意を払って頂けると、助かります。
<2005年の実際>
極大日前後は全国的に悪天だったため、当方も含めて観測自体がほとんどできませんでした。ただ、世界的にみても、目立った活動はなかった模様です。残念ながら、今回の条件程度では、この彗星からのまとまった極大の形成(流星の出現)は難しいようです。
ただし、この彗星からのトレイルの研究自体は興味深いので、機会がありましたらもう少し詳しく計算してみたいと思います。
(2005.9.1追記)
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