〜1999年しし座流星群観測記〜
当会寺久保氏によるエッセイです。しし群当日の行動がわかるかと思います。
今年はあまり騒いでいないようだが…
日本中が大騒ぎとなったしし座流星群騒ぎから1年、今年もしし座流星群の季節がやって来た。大騒ぎしすぎた昨年の教訓からか、今年のマスコミなどの取り上げ方は寂しい。もっとも、今年日本で大出現が見られる可能性が低いということを考えた、冷静な判断なのかも知れない。いくら可能性が低くとも、可能性がある限りじっとしていられないのが流星マニア。極大がずれるかも知れないし、新極大が現れるかも知れない、と少しでも良い方良い方に気持ちを切り替えつつ、今年の極大日を待った。
あいかわらず読めない天気
昨年「何が何でも流星雨を捉える」との意気込みで、悪天時は飛行機で宮古島まで行くつもりでチケットまで押さえた。しかし、今年は昨年に比べて大出現の可能性は低そうである。わざわざ飛行機で宮古島まで移動するまでもないだろう、と今年の場合は悪天になっても、飛行機で石垣島までの移動に留めよう、と決意したのだった・・・閑話休題・・・
17日朝は快晴。この天気が18日明け方まで続いてくれれば何も問題がないのだが…。今回観測に参加したのは4人。昨年のしし群観測会には同好会メンバー20名以上が集まったことに比べると、いかに今年のしし座流星群が盛り上がっていないかが分かる。もっともこれで大出現が期待できるかも?
晴れ間はいずこ
明日朝の予報は軒並み曇り。唯一晴れ間が望めそうなのは福島県北部〜宮城県の沿岸部分のみ。ここまで来たら行くしかない、と東北道をひたすら北上。観測場所の当てはないものの持ち前の野生の感(?)でなんとかなるだろうと、延々車を走らせる。途中、あちこちから入る電話などの情報を総合しても、晴れが見込まれるのは仙台付近のごく一部だけのようである。向かっている方向に間違いはない、たどり着けばきっと晴れているに違いない、と自分自身に言い聞かせ、ひたすら車を走らせるのだった。ラジオからはひっきりなしに、しし座流星群の話題が流れている。気持ちはすでにしし座流星群一色。果たして晴れ間にたどり着くことはできるのだろうか。
観測場所探し
この日、完全な晴天は見込まれそうもない。この際、少しでも流星が見られれば良いということで、雲が薄くなったら付近で空の暗いところを探し、そこを観測場所とすることにしてひたすら車を走らせる。しばらくすると、木星と土星しか見えていなかった空に、ちらほらと星が見えてきた。観測地を探すために、脇道に逸れ車を止めてみると… 「流れた」。1等星ぐらいしか見えない空にしし群だと思われる明るい流星が。しかし空の状態はあまり良いとは言えない。最悪、この辺りで観測することも視野に入れつつ、もう少し南下し条件の良い場所を探すことにした。輻射点はすでに昇って来ているとはいえ、明け方まではまだ時間がある。大丈夫、まだ大出現はしていない…
道路脇には車が一杯
福島県相馬市。天候はかろうじて星がちらほら見える程度であるが、このぐらいで妥協するか、そう判断し、このあたりで観測することにした。観測できそうな場所を探すことにした。海岸沿いを走っていると道の所々に車、車、車。一瞬、まわりが海だから夜釣りでもしているのか、と思ったがどうも違うようである。みんな車に寄っかかって東の空を眺めている。東の空…?しばらくして望遠鏡を出しているグループを見つけ、これらの人が何をしているのかが分かった。こんな場所(失礼、東京人にとって福島県とは全くの未知の場所なので)にも、こんなにたくさんの人がしし群を見に出ているとは、しし群恐るべし。その後、適当な広さの広場を見つけ、機材の準備を進めた。
立派な観測場所?
何気なく見つけた広場であったが、どうやら地元の人の間では立派な観測場所の一つだったようだ。先に観測準備をしていたのは、東北大学天文部の方々。何人かはNMS(日本流星研究会)やJOIN(掩蔽観測者同報)などでおなじみの人たちであった。準備をしているうちに、どんどん雲が切れてきて雲量1に。天の川もくっきり見える。遠路はるばる来た甲斐があるというもの。「よし早速観測開始!」…と観測を始めてみたものの…
哀しいかな、ものの10分とたたずに一面雲。3時頃まで粘ってみるも、天候の回復は見込めず、撤収。この日の大出現はなかったということが分かっただけでも、遠路はるばる来た甲斐があったというもの、と無理矢理自分を納得させて、帰路についた。帰りの高速道で車中から見る空はきれいな青空だった。
玄関出たら1時間で観測地
18日夜、今晩は昨晩と違って好天。昼間の流星雨後ではあるが、少しでも流星を見るべく、近くの観測場所へと向かった。観測場所まで6時間以上もかかった昨日とはうって変わって、今晩はものの1時間で到着。天気は快晴。昨年と同じ場所に陣取りしし群の出現を待つことにした。23時を回った。輻射点が地平線上に上がったはずだが、まだしし群の流星は現れない。大出現はしていないようである。とりあえず最初のしし群が見られたら観測を始めるということで、しばらくそのまま待機。
再び巡り会えた長経路の流星
23時半を回った頃、この日最初のしし座流星群の流星が現れた。昨年も見られた中心部分が赤く長経路の流星だ。その後、劇的に流星が増えてはこないもののちらほらと流星が流れる。明け方までの間には数も増えて来るだろうと、24時から観測を開始した。昨年100人以上が押し掛け大混雑になったこの場所も、今年は私たちの他に2組ほどしか人がいない閑散とした状態。上の駐車場にはもう数組人が来ているようだが、昨年の大混雑に比べればたいしたことはない。落ち着いて観測に専念できるというものである。人の数が少ないのと比例するかのように、流星数も少ないまましばらく時間が経過していったが…。
連発して飛ぶ流星たち
1時を過ぎた辺りから流星数が増加しだした。火球クラスの明るい流星こそ少なく地味な印象ながら、1時間あたり60〜80程度の出現。これは昨年以上どころか、今まで見てきたどの流星群と比べてもハイレベルの活動である。また、1つ流星が流れるとそれに呼応したように2つ3つ続けて流れることが多く、瞬間瞬間はちょっとした流星雨状態(が、それが続かないから流星雨にはならないのだけど)。連続して流れたときには記録が追いつかないほど。しかし、その後流星数は増えるでもなく減るでもなく、高原状の極大がだらだらと続いていたといった感じで。しかし、極大過ぎにも関わらず、これほどの出現を見せているのはどういう訳なのだろうか。1866年放出の流星物質のによる極大によるものなのか?それだったら明け方に向かってさらに出現数が伸びて行くのだろうか?などいろいろと疑問はあったが、観測は4時10分で打ち切り。5時前に観測場所を後にし、帰路へと着いたのだった…。というのも会社員の哀しいサガ、この日は朝から通常出社のため、これ以上遅くなると会社に間に合わなくなってしまうからなのであった。不満半分、でも予想外の出現が見られたから勘弁してやるか、の今年のしし座流星群であった。
おわり
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