'99年のジャコビニ流星群の情報

 昨年大出現したジャコビニ流星群の話題です。今年はほとんど流れない可能性が大きいかったのですが、予想外にも少々活発な出現があったもようです。


<観測?速報>

 当会では、ジャコビニ群を観測すべく、10月9日の夕方に遠征しました。天気予報に反してどこも雲に覆われてしまい、非常に条件のに悪い中の観望だったのですが、1時間に(多く見た人で)5個程度のジャコビニ群を見ることができました。
 空の条件はとても観測をすることのできる状態ではなく、常に雲量7以上。そんな中、時折訪れる晴れ間に、ゆっくりとしたジャコビニ群の特徴的な流星を確認することができました。

 こんな悪条件でしたので、もっときちんと晴れたところでは、例えば1時間に20個以上は見えてるんではないかと思うのですが、特に関東近辺は天気が悪くとらえられなかったようです。どなたか、観測した方はいらっしゃいませんでしょうか。

観測場所:長野県車山付近
観測時刻:19:20頃〜20:20 5個(怪鳥個人の数) ※ここだけ開始時刻あいまい。
     20:20 〜21:20 2個(同上)
     21:20 〜22:20 2個(同上)
 平均雲量は9以上?。但し晴れ間の最微星光度は6等程度。
 また、常に空を監視していたわけでもなく、休み休みでした。



<続報>

 10月9日夕方のジャコビニ群ですが、日本流星研究会のメーリングリストによれば、北海道で20:00〜20:50の50分間に18個(HR=21.6)の出現が捉えられました。北海道では、このほかにTV観測でも活発な出現が捉えられてます。
 また瀬戸内地区流星観測者会のホームページによると、岡山にて19:00〜20:00に28個(HR=28)、20:00〜21:00に23個(HR=23)の出現が捉えられてます。
 このほか、電波観測によっても20時頃をピークとした若干の増加があり、ジャコビニ群の出現によるものと考えられてます。

 以上から、今回のジャコビニ群の突発出現は、20時頃を極大にHR=20〜30程度と考えられます。また、19時前の薄明時期に極大があった可能性も、否めないと思います。母天体であるジャコビニ・チンナー彗星の軌道から計算される極大は9日12時頃で、これよりも8時間ほど極大は遅くなったことになります。

 今年予想外に突発出現があったこと、また極大がかなりずれたことの理由については、今後研究されることでしょう。怪鳥自身も、鋭意計算中ですが、芳しい結果は得られてません。なかなかジャコビニ群は奥が深い流星群です。

 それにしても、この突発出現の観測者は非常に少なかったですね。これは観測者の多い関東地方周辺が曇ったことと、ジャコビニ群の極大が前夜であると錯覚されたことに原因がありそうです。本来ならば8日の晩、9日の晩、両方注目する必要がありました(これは昨年のしし群にも言えることで、予想極大の前の晩の方が活発だったのでした)。
 ジャコビニ群については、今後も毎年、注目しなければならない流星群でしょう。

<リンク>


以下は事前掲載情報です。

<ジャコビニ群概要>

 ジャコビニ流星群は、ジャコビニ・チンナー彗星(ジャコビニ・ツィナー彗星などとも表記されます)を母天体とする流星群です。この彗星から放出された砂粒が、地球に飛び込んできて流星となるものです。そしてこの流星群は、過去に4度の大出現をみせているのです。

 母天体のジャコビニ・チンナー彗星は約6.5年で一回りして太陽の近くに戻ってくる彗星です。周期に「0.5年」の半端があるため、一回りごとに帰ってくる時期が半年ずれ、春に戻ってくる場合と秋の場合が、交互になります。
 地球は10月8日〜9日ころ彗星軌道と接近しますので、秋に戻ってくる2回りごと(13年ごと)に、彗星と地球は接近します。
 流星の元になる彗星から放出された砂粒は、彗星の近くを一緒に移動してますので、彗星が地球に接近するときには、彗星の前後に砂粒もたくさん戻ってきます。この砂粒の流れの中を地球が通過すると大出現となるため、13年に一度、流星の大出現するチャンスが巡ってくるわけです。接近した年と出現状況は、下記の通りです。

  年     出現状況
1933年  ヨーロッパで1時間に数千個
1946年  アメリカで1時間に数千〜数万個
1959年  出現せず
1972年  期待されたものの、ほとんど見られず
1985年  日本で1時間に数百個
1998年  日本で1時間に百個弱程度
 全く流れない年もありましたが、ほぼ13年おきに出現していることがわかります。逆に今年は昨年彗星が接近したばかりで、しかも大出現したその1年後です。大出現となる可能性は非常に低いと言えます。

模式図:昨年と今年の位置関係

今年は彗星も遠ざかり、砂粒の分布の濃い部分は遠ざかっている。

<拡散が進めば流れる可能性も>

 ジャコビニ・チンナー彗星が地球軌道に接近し始めたのは、今世紀最初の頃で、地球に接近するような流星の元になる砂粒(以下、流星物質)が放出されはじめてからは、まだ100年程度と時間が経っていません。このため流星物質がまだあまり彗星から離れてなく、大出現はおろか流星の出現自体が、ほぼ13年おきにしか起こりません。

 しかしながら、一昨年の1997年には一部の観測者で出現が認められました。数こそ1時間に数個と少なかったのですが、彗星の接近する年以外ではっきりとした出現が確認されたのは、ほとんど初めてのことでした。

 したがって、一部の流星物質は100年の間に拡散が進み、彗星からだいぶ時間差をおいて戻ってくるようになっている可能性がなきにしもあらずです。彗星接近から約1年経った今年ですが、少ない数ならばジャコビニ群が出現する可能性はあると思います。ただしその規模は1時間に数個から、最大限でも10個程度でしょう。

<注目時期、輻射点など>

 以上から、今年ジャコビニ群が大出現する可能性は非常に低いことがおわかりかと思いますが、多少は見られるかもしれません。実際に観測する場合の状況について述べましょう。

 輻射点はりゅう座にあり、夕方から宵にかけて北西の空に位置します。流れた流星を逆にたどると、この方向に集まることになります。
 輻射点は、深夜になると地平線近くの低い位置になり、見られる流星数は物理的にとても少なくなります。このため、夕方から23時頃までが勝負となります。

 ジャコビニ群の流星はふわーっとした感じでゆっくりと流れますので、こんな流星が夕方、北西の方から流れてくるように見えたら、ジャコビニ群だと思って間違い有りません。

 極大は10月9日の昼間と予想されてます。このため、注目するのは8日の夕方、9日の夕方となるでしょう。どちらかと言えば、9日の方が可能性が高いかもしれません。

 来月のしし群、12月のふたご群に比べれば、相当期待度の低い流星群ですが、ちょっとだけ注目してみてはいかがでしょうか。


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