Petriew彗星由来の流星群出現の
可能性についての検討


[概要]

 2001年に発見された新周期彗星、Petriew彗星(2001 Q2)からの流星物質を、木星の摂動の影響についてシミュレートした。
 その結果、流星物質は約0.03AUまで接近する結果となった。流星出現の可能性が若干期待される。

[方法]

 1972年以来のPetriew彗星の各回帰で近日点通過の瞬間に、進行方向について-30m/s〜30m/s(マイナスは進行と逆方向)の速度で流星物質を放出させた。
 放出速度はまず5m/s間隔で計算し、地球軌道に接近するものについてはさらに速度の間隔を小さくして計算した。
 なお軌道要素はComet Orbit Home Page(木下一男氏)のものを使用した。

[結果]

 2001年の回帰について、流星物質を放出した年毎に結んでグラフ化し、図1.にまとめた。

X軸:降交点通過時刻(T1)  Y軸:降交点通過時の太陽との距離(r)

図1. 流星物質の接近の様子

 彗星は1972年以降では1982年、1994年に木星に接近し、軌道が少しずつ変化する。流星物質も同様に木星の摂動を受け、木星との接近のタイミングで分布が大きく変化することが示された。

 1972年、1978年に放出した流星物質は、彗星本体の軌道よりもかなり地球に近づく軌道が得られた。特に1978年に-15m/sで放出された物質は、0.005AUまで接近し、十分に流星出現の可能性が考えられる結果となった。

表1. 各流星物質とその要素

降交点
/最接近
接近時刻太陽黄経距離輻射点流星速度放出年放出速度
年月日(2000.0)(AU) α  δ (km/s)(m/s)

降交点
2001/10/2721h214.11-0.046296゜+27゜13.0彗星本体
最接近
2001/10/2800h214.24-0.046295゜+27゜13.0

降交点
2001/10/2811h214.710.015292゜+30゜12.61972
-6.5
最接近
2001/10/2816h214.910.015292゜+30゜12.6

降交点
2001/10/2815h214.850.005292゜+32゜12.51978
-15
最接近
2001/10/2817h214.950.005292゜+31゜12.5

 表1.は接近する流星物質について、その降交点通過日時、最接近日時、太陽黄経、接近距離、輻射点、流星の速度をまとめたものである。

 1972年に-6.5m/sに放出された流星物質は0.015AU、1978年に-15m/sで放出された物質は0.005AUと地球軌道に接近することが示された。地球はこれらと10月28日の午後に接近する。
 予想輻射点は、彗星本体の軌道から計算されるものと比較して、数度のずれがあるが、ほぼ同じ位置である。

[まとめ]

 彗星軌道本体は、地球軌道と0.046AUまでしか接近しない。この距離は、過去の流星出現のケースと比較するとかなり大きい値であった。

 一方、放出された流星物質の中には、彗星軌道よりも地球に接近するものが存在する結果を得た。特に1978年に放出された物質の中には、0.005AUと極めて地球に接近し、流星出現が期待される結果となった。
 軌道との接近時期は、10月28日11h〜17hである。また軌道傾斜角が比較的小さいため、1978年の物質の場合10月26日〜30日で0.01AU以内となる。

 なお、日本流星研究会の長田氏が、10月27日夕方、α293゜、δ+26゜より出現する流星群の輻射点を検出している(NMS同報メールより)。これは本彗星から予想される流星群の輻射点位置に近く、関連群の可能性がある。

[軌道計算の概要と誤差]

 計算には市販ソフト「Excel」のワークシートを利用した。シミュレート間隔は0.5日おきで、数値積分の手法などは用いず、木星および太陽との重力の影響のみで運動させた。このため、木星以外の惑星の摂動は含まれない。
 また、ある程度の計算誤差が生じることがわかっている。その値は(今回の彗星本体についての結果から)一公転あたりT=約5日、q=0.01AU程度である。
 また、光圧などの影響は考慮していない。これは木星の摂動に対して、影響がかなり小さいと考えられるためである。

[参考文献(リンク)]


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