イケヤ−チャン彗星を見たよ

寺久保一巳

これは「久しぶりに天体観測に行って楽しかった」と言うことを書いたもので、肝心のイケヤ−チャン彗星についてはあまり触れていません。まあ、「そんな駄文でもいいよ」という心広い方はお読み下さい。

3月11日、それなりに明るくなることが期待される「池谷−張彗星」を見に富士山方面に遠征することにした。冬の間、遠征しての観測をしていなかったので、久しぶりの遠征となる。この日集まったのは同好会メンバー5人。遅れて現地(観測)に4名(大人2名子供2名)が来ると言うことなので、合計9名での観測会だ。この日の気温は15度を超え、4月中旬の陽気。真冬の観測に備えて厚着をしてきた我々は皆暑そうにしている。春のような東京を出発し、真冬?と思われる富士山麓に向かった。

天気は快晴。しかし空は冬の空ではなく、低空に霞がかかった春の空。夕方の低空に見られる彗星の観測には、ちょっと厳しい空かな、と心配しているうちに、富士山麓の観測地へ到着した。途中の道が雪や氷に覆われていることを想定して、滑り止めなど装備した車で臨んだが、いらぬ心配だったようだ。日陰に雪が残っているものの、道にはほとんど雪がなかった(一部道の真ん中に山のような雪が残っている場所もあったが)。

暗くなってから到着する事の多いこの観測地に、今日は日が高いうちに到着。同じ所のはずなのに、いつもと違って新鮮な感じ。ひなたぼっこが出来るくらい暖かなしばふの広場で、ゆっくりと観測の準備を始めた。機材の準備を始めていると、公園を自転車で回っている兄ちゃんが「今日流星群か何か見えるんですか」と聞いてきた。しし座流星群以来、一般の人にも「流星群」という言葉は認知されているらしい。残念ながら今日は流星群ではなく彗星が見えると説明すると、今ひとつ腑に落ちない表情。まだまだ「彗星」という言葉は一般の人に認知されていないようだ。

そうこうしているうちに、残り4名も到着。到着早々子供が芝生で遊んでいるうちに、日が傾いてきた。日が傾くにつれ気温がぐんぐん下がって来た。白と青のコントラストだった富士山も、白と赤のコントラストに変わってきた。そろそろ日没だ。さて彗星は見つかるだろうか。

日が暮れて間もなくすると、天頂付近に一番星が見つかった。木星だ。次に、西の空低くに輝く光点、金星。その後土星やシリウスが見えだし、徐々に星の数が増えて行った。しかし、この日の彗星を探す目印になる星、火星がなかなか見えてこない。火星といえども、合近くとなった今では思ったほど明るくないらしい。オリオン座の星星が形を表してきた頃、ようやく火星発見。いよいよ、彗星捜索開始だ。

彗星の観測、いや観望ということでこの日の機材は軽装備…と思いけや、なかなかどうして大量の機材が集まりまった。大きさこそ大きなものが少ないものの、数は集まった人数よりも多い位。望遠鏡4台位と双眼鏡多数。いったいこれだけの機材がどこから出てきたんだ?と、機材を見回しているうちに「彗星発見」の声があがった。望遠鏡を覗かせてもらうと、確かに恒星とは違うぼやっとした光点が。そのうち他の望遠鏡(双眼鏡)についていたメンバーからも彗星発見の声があがり始めた。空が暗くなって来るにつれ、彗星もだんだん見栄えがしてきた。最初単なる綿くずのようにしか見えなかった彗星に、尾が見え始め、そのうち双眼鏡の視野半分くらいまで尾が伸びてきた。

イケヤ−チャン彗星の明るさは4等台、尾の長さは4度くらいであろうか。低空の明るさに飲まれ、肉眼でこそ見ることができなかったものの、なかなか立派な姿をした彗星であった。

そのうち、飛行機の経路と彗星の位置が交わった。望遠鏡で彗星を見ていると、その視野の中にひっきりなしに飛行機が通過していった。撮影した写真には、多分沢山の飛行機の跡が映っていることだろう。

こうしてイケヤ−チャン彗星観測会(その1)が無事終了した。彗星の沈んでいった西空には黄道光が綺麗に輝いていた…

おわり


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