水運儀象台

下諏訪町、諏訪湖時の科学館「儀象堂」


 水運儀象台は、中国北宋時代の首都「開封」に建設された、時計と天体観測装置が一緒になった天文台だそうです。1087年から1092年にかけて建設され、北から攻めてきた金に壊されるまで約30年ほど稼働したそうです。
 これは、当時の蘇頌が書いた「新儀頌法要」の解読をきっかけに、下諏訪町に復元されたものです。時計についての展示コーナーなどを含めて、諏訪湖時の科学館「儀象堂」として公開されてます。
 怪鳥は1998年6月18日に訪問しました。


<水車>

 全体の動力源は、水車です。画像ではわかりにくいですが、水が注ぎ込まれて水車を回してます。元々は、人力で中の別の水車を回して汲み上げてたそうですが、復元ではポンプで水を汲み上げてました(人力で汲み上げる水車も、復元はされてます)。

 注ぐ水を溜めておく箱には、水の圧を一定にするしくみが備わっていて、時間当たりの水量が一定になるそうです。

 さらに水車には、脱進機という時計の「てんぷ」と同じストッパーのしくみが備わっていて、水車の歯車が一歯ずつしか進まないようになってます。こうして時間に正確に歯車を回すのだそうです。

<渾儀(こんぎ)>

 一番上にあるのは「渾儀」で、今で言う天文台だそうです。星を見るときは上の屋根を取り外して使用します(今のドームですね)。ただ、望遠鏡はついてなくて、筒を星に向けて肉眼で観測したそうです。

 しくみは環が二重になっていて、内側だけが回転します。これはまさに「赤道儀」です。これを水車から伝わる動力で星の動き(地球の自転速度)に合わせて回転させ、追尾します。これはなかなかすごいと思いました。

 今の赤道儀は電力でモーターを回しますが、実は怪鳥の中学時代に学校にあった赤道儀というのが、おもりが落ちていくのを利用して追尾するしくみの赤道儀でした。水とおもりの違いこそあれ、重力を利用するしくみはかわらないですね(なお、おもりを利用した赤道儀は国立天文台に多分まだあり、一般公開のときに見られます)。

 外側の環には目盛りがついていて、位置が測定できます。肉眼で見えるような明るい新彗星の位置を、これで観測したんでしょうかねー。思いは巡りますよね。

<渾象(こんしょう)>

 二段目には、「渾象」という、いわゆる天球儀がありました。これも実際の星空に合わせて、水車の動力で回転します。上の渾儀と合わせて利用すると、星の位置が観測できるわけです。なかなか素晴らしい!

 画像は6月18日の16時50分頃に撮影しました。StellaNavigator(AstroArts/ASCII)でこの時刻に見えるであろう星空を再現したのが、右の図です。ちょっとずれがあるかなとは思いますが、オリオン座がだいたい同じ位置にありました。

(天球儀は実際の星空と位置が反転してしまう<中から見たときの星空になっている>ので、StellaNavigatorの図を反転させてあります。)

 なお、星座などはもちろん当時の中国の星座です。外からは詳しく見えないのが残念でした。

<時計台>

 上から三段目より下は、時計台になってます。時、刻はそれぞれ人形が札を持っていて、「子初」「子正」・・・などの札が窓から見えるようになってます(ちなみに、時は十二支が「初」「正」の二つにわかれて、24時間になるそうです)。また正時には、人形が鐘や太鼓を叩くようになっています。

 一番下は夜間の時刻です。夜間の時間が変動しても、時間数は変わらない制度を使用していたため、季節によって輪を交換して使用したそうです。ここでは、冬至のものに固定されていたため、この時刻なのに(確か)「日没」が出てました。

 (ガラスの映り込みで、はっきり見えない画像ですみません。)

 「儀象堂」の入館料は大人900円で、決して安い価格ではないと思ったのですが、なかなか面白かったです。天文をかじったことのある方なら、一度、見学してもよいのでは?と思います。


リンク

諏訪湖時の科学館 儀象堂
 Shinshu onlineの中にある、儀象堂の紹介ページです。

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