水運儀象台は、中国北宋時代の首都「開封」に建設された、時計と天体観測装置が一緒になった天文台だそうです。1087年から1092年にかけて建設され、北から攻めてきた金に壊されるまで約30年ほど稼働したそうです。
注ぐ水を溜めておく箱には、水の圧を一定にするしくみが備わっていて、時間当たりの水量が一定になるそうです。
さらに水車には、脱進機という時計の「てんぷ」と同じストッパーのしくみが備わっていて、水車の歯車が一歯ずつしか進まないようになってます。こうして時間に正確に歯車を回すのだそうです。
しくみは環が二重になっていて、内側だけが回転します。これはまさに「赤道儀」です。これを水車から伝わる動力で星の動き(地球の自転速度)に合わせて回転させ、追尾します。これはなかなかすごいと思いました。
今の赤道儀は電力でモーターを回しますが、実は怪鳥の中学時代に学校にあった赤道儀というのが、おもりが落ちていくのを利用して追尾するしくみの赤道儀でした。水とおもりの違いこそあれ、重力を利用するしくみはかわらないですね(なお、おもりを利用した赤道儀は国立天文台に多分まだあり、一般公開のときに見られます)。
外側の環には目盛りがついていて、位置が測定できます。肉眼で見えるような明るい新彗星の位置を、これで観測したんでしょうかねー。思いは巡りますよね。
画像は6月18日の16時50分頃に撮影しました。StellaNavigator(AstroArts/ASCII)でこの時刻に見えるであろう星空を再現したのが、右の図です。ちょっとずれがあるかなとは思いますが、オリオン座がだいたい同じ位置にありました。
(天球儀は実際の星空と位置が反転してしまう<中から見たときの星空になっている>ので、StellaNavigatorの図を反転させてあります。)
なお、星座などはもちろん当時の中国の星座です。外からは詳しく見えないのが残念でした。
一番下は夜間の時刻です。夜間の時間が変動しても、時間数は変わらない制度を使用していたため、季節によって輪を交換して使用したそうです。ここでは、冬至のものに固定されていたため、この時刻なのに(確か)「日没」が出てました。
(ガラスの映り込みで、はっきり見えない画像ですみません。)
「儀象堂」の入館料は大人900円で、決して安い価格ではないと思ったのですが、なかなか面白かったです。天文をかじったことのある方なら、一度、見学してもよいのでは?と思います。