怪鳥(患者本人)による、食中毒症状覚え書き(^^;
貴重な体験だったので、書き留めておきます(あんまり読む人いないと思いますが(^^;)
怪鳥が食中毒となったのは、2003年4月6日夜のことでした。
この日、北海道の親戚から送られてきた貝は2種類。二枚貝の「ホッキ貝」と巻き貝の「ツブ貝」と呼ばれるものでした。で、問題のぶつはツブ貝のようです。これらは冷蔵便で、生きたまま届きました。
- ●19:05頃
- 1個目のツブ貝のツボ焼き(醤油)ができあがる。この身をほじくり出して、4つにスライスした。
1枚目を口に入れるが、これはあんまり味がしなかったので、2枚目は貝殻に残った焼き汁につけて食べる。このとき、舌に「からし」のようなピリピリ感を感じる。なにか味付けをしたのか母親に聞くが、醤油以外には特になにもしてないとのこと。3枚目は普通の醤油をつけて食べるが、やはりピリピリ感があった(今考えると、このとき、おかしいと思えばよかった)。4枚目も醤油で食べたが、このときはあまりピリピリ感がなく、こんなものか、と思う。
この後、先端の方のいわゆる「ワタ」の部分もひとつまみするが、あまりおいしくないので、それ以上は食べず。
- ●19:20頃まで
- 刺身にしたホッキ貝、ツブ貝をわさび醤油で食すが、特に味には異常を感じず。さっきのツボ焼きがピリピリした感じだったと、父親に話す。もう一個の方を、同様にして父親・母親が食べるが、特に異常はないとのこと。これを私も一切れ食べてみて、確かになにも異常がないのを確認。
- ●19:30頃?
- 突然眠気のような感覚がおそい、目頭がぽーっとほてってきた感じがし始める。やがてテレビを見る目がショボショボし始め、ピントが合わなくなってくる。
「何かやばいかも」と家族に告げて、麦茶を一口飲む。トイレへ立つが、その時にはかなり目が回っている状態(めまい感)で、歩くのにふらつく。腹痛・嘔吐感などは特になく、小用のみ済ますが、トイレで立っているのがつらい状態。食卓に戻って、麦茶をもう一杯飲む。
- ●19:45頃?
- 目が回って気持ち悪く、立っているのがつらい状態で、床に座り込む。このとき、貝毒には神経系を麻痺させるものがあるとの記憶をたどり、最悪の場合を考えてリトルに救急車を呼んでもらう。
このとき自分で難聴のチェックをするが、耳には異常なし。唇などの顔にも特に麻痺感はなし。脈拍が通常より多く、少し息苦しい感じあり。
この後、玄関まで歩くも、かなりふらつく。玄関に座り込んで救急車を待つ。
- ●19:50頃?
- 5分ほどして救急車到着。まだ立つことはできたので、救急隊の人の肩を借りて救急車まで。しかし、ふらつき感はひどく、ようやく乗り込んだ感じ。
ベッドに横になり、ひとしきり問診を受ける。眼鏡が外される。リトルが状況を説明。自分は症状を色々と説明しようとするが、言葉にうまくできない。みぞおちの辺りが少し気持ち悪い気がするが、吐きたいほどではないと説明。目は回ったままだが、ライトで瞳孔をチェックされても、隊員に慌てた様子がなかったので、瞳孔散大は無かったのでしょう。
しばらくして、東京ER・府中(都立府中病院)へ搬送開始。目が回って気持ち悪いが、途中窓からの景色を一度確認した記憶あり。また救急車がどちらに曲がっていってるのかもよく分かり、どこを走っているのか想像はついた。
- ●20:00頃?
- 病院到着。寝たままストレッチャー(ベッド)にて、診察室に入り、中のストレッチャーに移る。この辺りから手足が寒い感覚あり。実際、手はかなり冷たかったらしい。
問診を受けるが、頭がぼーっとしていて、症状を上手く説明できない。と同時に、ろれつが回らない感じ。一言しゃべって、大きく息をして、また一言しゃべって、のくり返し。
この頃、足などにこわばり感(寒い時に体が硬直している感じ)があって、変な感じがする。力を入れてないのに、勝手に力が入るような感覚。でもこれをうまく説明できなかった。
血圧はやや高く150-70くらい(とのあやふやな記憶)。普段120-60くらいと説明した覚えあり。血中酸素は100で異常なしだった。
- ●20:20頃?
- 問診が一通り終わり、「食べた貝が原因となっている可能性はありますね」との説明を受ける。点滴が始まり、また血液検査用に血液採取。速めに点滴を落として、悪いものを早く尿に出しますので、との説明。点滴が生理食塩水だけだったのか、利尿剤などが含まれていたかどうかは不明。点滴を2時間ほどして、様子をみるとのこと。心電計を取り付けて、病室へ移動した。
病室では点滴の流速調整の機械をつけた。500mlを2時間で落とす設定だったらしい(リトルによる)。この段階では、悪くなっているのか、快復してきているのか、自分ではわからなかった。
- ●時刻不明(20:45頃?)
- 一度目の尿意。まだふらつくので、尿器にとる。この際結局立ち上がったが、めまい感は、少し和らいだ感じ。再び横になる。
この頃、こわばり感が軽減。寝ていても不自然な感覚がなくなり、楽になる。
- ●時刻不明(21:15頃?)
- 二度目の尿意。先程立ち上がれたので、トイレに歩いて行ってもいいかと聞き、了解を得る。点滴台を押しながら、リトルに肩を借りてトイレに移動するが、この段階で、すでにめまい感はかなり改善。
この後、左の背中側に痛みが生じる(尿管結石のときに出る痛みと似た感じで、かなり弱め)。念のため医師に聞くが、様子をみましょうとのこと。早い点滴で、腎臓に負担がかかったのかも。
ここで、寝たまま眼鏡をかけてみる。天井が回る感じはないが、まだピントが合いにくいので、しばらくまたかけずにすごす。こわばり感はほぼ消失。
- ●時刻不明(21:40頃?)
- 三度目の尿意。眼鏡をかけても、ピントが合うので、眼鏡をかけてトイレに移動。めまい感も、ほぼ消失。かなり快復の手応え。
排尿時、腰の痛みは少しあったが、戻って横になったところでこれもおさまる。
- ●22:25頃
- 四度目の尿意でトイレに行った後、気持ちも落ち着く。点滴終了。
医師によると、原因が貝にある可能性が高いとの説明。ただ、症状は2〜3時間で落ち着くと本に記載されているのを確認、今の症状なら問題ないでしょうとのこと。帰宅して様子をみてくださいとの説明。
この時点で歩くことに異常もなく、疲労感以外に異常みられず。ほぼ全快。症状が出てから約3時間ですね。
- ●23:00頃
- 父親の車を呼んで、これに乗って23:15頃帰宅。
その後普通に食事をして、普通に就寝。以降異常みられず。
・・・という経過で発症し、快復したわけです。
家に帰ってきてから大学時代の教科書で調べたところ、通称ツブ貝は、ヒメエゾボラまたはエゾボラモドキと呼ばれる貝で、内臓ごと食べると一種の酩酊感をともなう食中毒を起こすことがあり、このため「ネムリツブ」とも呼ばれる、とのことでした。
中毒症状は、食後30分くらいで後頭部の頭痛、めまい、船酔感、眼のちらつき、眼底痛が出るそうです。めまい、船酔感、眼のちらつきなど、ほぼズバリですね。幸いにも、通常は数時間で症状は快復し、死亡例はない、とのことでした。
原因物質は、貝の唾液腺に含まれているテトラミンという物質で、熱で分解されることはないそうです。細菌性の食中毒などは、加熱処理で防げるわけですが、貝毒などの毒性物質による中毒では、加熱処理は関係ないケースが多いので注意が必要でしょう。
ちなみにこの貝について、母は叔母(母の妹)に食べ方を聞いており、身を取り出してよく塩水でしごいて、刺身で食べるようにと言われたそうでした。
実は塩水でごしごしとしごくことで、唾液腺はわりと取れるらしいので、その通りに処理していれば、今回の食中毒も防げたのでしょう。実際、妹夫婦宅では、この日は刺身のみ作って大丈夫だったそうです(でも一緒に酒も呑んでいたので、軽い症状だったらわからなかったかも、と言ってました(^^;)。
しかし、焼いて食べるときは、この塩もみの作業は必要ないと母が思いこんだため(普通は、思いますよねぇ)、唾液腺ごとスライスされた貝を、私は食べた、ということになるわけです。
なお、茹でたり焼いたりする場合でも、あらかじめ切り開いて、唾液腺を切除する必要があるとされているそうです。普通は買ったお店で処理してもらうように、と注意されています。
なお食べたときのピリピリ感がこのテトラミンと関係あるかどうかは、調べた範囲では記載されてなくて不明です。食べた身のスライスで、ピリピリしたのが2枚目と3枚目だったということは、この部分に唾液腺がついていたのかもしれません(あとで唾液腺の部位を調べたんですが、つじつまは合いそうです)。
で、この中毒症状を両親に話したところ、実は二人とも目のあたりがぼーっとして、ちょっと酔っぱらった感じはしていたそうで、軽い中毒症状が出ていたことがあとでわかりました。リトルも付き添ってる間中、眠かったらしいのですが、これももしかしたら軽い症状だったのかもしれません。危うく「一家全員食中毒」のニュースになるところでした。
父かリトルが車で運ぶということも考えたのですが、今考えると救急車にして正解でしたね。途中で中毒症状が出たら、とても危険。
今回は軽い症状で済む毒物による中毒だったのが不幸中の幸いでしたが、貝毒にはかなり強烈なものも含まれています(まれですが、フグ毒と同じテトロドトキシンが含まれるケースまであります)。
普段食べ慣れないものを食べる際は、調理方法など、十分に気を付けないといけないですね。反省。みなさんも気を付けましょう。
参考リンク集
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