土星の環の消失現象について解説('95〜'96)


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1.土星の環が消失する理由


 土星と言えばその立派な環と言うほど、土星を美しく見せているのがこの「環」であります。しかし、この環はその大きさ(横幅と言いますか、広がりと言いますか)に比較して非常に薄いことがわかっています。
 その厚みですが、薄い説では実に数十メートル、一番厚いところでも1キロメートル程度と言われてます。土星の直径は約6万キロメートルですから、その薄さは実に6万分の1以下!こんなにも薄いのです。
 今、土星の姿を連想して下さい。この土星の横幅の6万分の1の薄さがイメージできますか?つまり、環を真横から見たら、この環はまるで消えたかのように見えるのです。どんなに大きな望遠鏡でも、地球上からでは確認は不可能だそうです。
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2.環の消失の3パターン

 環を真横から見たとき環が消えて見えるのは今述べた通りですが、この他にも環が消える現象があります。全てを挙げると、以下のようになります。



 1)環を真横から見るとき(環の平面上に地球が位置する)
 2)環の真横から太陽が照らすとき(環の平面上に太陽が位置する)
 3)環の太陽光が当たっていない面を見るとき
   (環の平面をはさんで、太陽と地球が反対側に位置する−裏側照明

 1)については、すでにご説明した通りです。
 2)についてですが、土星の環も、太陽光を反射することで光って見えるため、光が真横から照らすときには、やはり環が消失します。
 さて、難しいのは3)のときです。これは、環の反対側に太陽が位置すると言う訳ではありません(絶対にそういう位置関係にはなりません)。地球と太陽が、環の平面に対して微妙な位置になるときに、こういう現象がおきます。これを「裏側照明」と呼ぶそうです。但しこのときには、完全に環が消えるのではなく、微妙に裏側に透けた(散乱した)光でうっすらと見えるそうです(特に普段はほとんど見えないC環が、うっすら光ると言われてます)。従って、厳密な意味での消失ではありませんので、3)については、ここでも消失とは扱わないものとします(もっとも1)、2)の場合だって厳密な意味で「消失」する訳ではありませんが(^^;)。
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3.消失現象のときの土星の位置

 さて、'95年から'96年までの間に、上記の1)が3度、2)が1度起き、計4度の消失があるとされてます(ちなみに裏側照明は2期間あります)。この一連の消失現象について、土星(特に土星の環の平面)、地球、太陽の位置関係について考えてみましょう。
 土星の環は、土星の赤道面上に位置しますが、この赤道面は、土星の軌道面に対して、約25度傾いています(地球も24.5度傾いていますよね)。この傾きは、太陽系の外から見ればほぼ同じ傾きのままで、土星は太陽の周りを廻っているわけです。
 地球からこの土星の環がどのように見えるか、という事は、環の平面に対して地球がどのように位置するかで決まります。環の平面より地球が北にあれば、環の北側が見えるわけですし、逆に環の平面より地球が南にあれば、環の南側が見えます。



 では、まず図の中の(1)の位置に土星がいた場合を考えましょう。このときには、環の平面は地球よりも南側(図の下側)にありますから、地球が地球軌道上のどの位置にいても、環を北側から見る事になります。逆に土星が(4)の位置にいた場合には、環の平面は地球軌道の北側になり、どんなに地球が軌道上を廻っても、南側(図の下側)からしか環を見られないことになります。
 ところが、土星が(2)〜(3)の位置に来たとき、それから(5)〜(6)に来たときには、環の平面が地球軌道を横切ることになります。この期間には、地球の位置次第で、環の平面上に地球が位置する時が出来ます。この時、環を真横から見ることになり、消失します。また、平面が太陽を横切る事が期間中に1回ありますから、この時は真横から太陽光があたって消失するわけです。これらが環の消失現象となるわけです。
 土星の環の平面が、地球軌道を端から端まで横切るのに、約1年かかります。土星は30年弱で太陽の周りを1周しますから、約15年に1度、環の消失する現象が、1年弱の期間内に何度か訪れると言う訳になります。
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4.土星の環の平面と地球、太陽との位置関係

 さて、'95年から'96年にかけて、4回の消失が起きると書きましたが、それぞれの位置関係について、図を見てみましょう。図は地球の位置がわかりやすいように、地球軌道を大きくして、そこに環の平面だけを書き込んでいます。土星との位置関係ががわらかなくなったら、前の図の(2)〜(3)の位置を想い出して、イメージして下さい。

 今回の消失現象ですが、まず土星の環の平面が地球軌道を横切ることから始まりました。これは'95年の5月頃になります(厳密に計算したわけではないので、「頃」を使わせて下さい)。これから'96年の5月頃まで約1年かけて、図で右から左に平面が動いていきます。
 さて、5月の頃、地球は平面に結構近いところにいます(1番上の図)。
 このあと、5月22日には平面上を横切ります。これがすでに起きた1回目の消失です(2番目の図)。
 そしてしばらくは、地球が平面の南側になります。太陽の方はまだ平面の北側です。つまり環の平面をはさんで両側に太陽と地球が位置しますから、裏側照明という事になります(1番下の図)



 そして地球が環の平面の右側から追いつく格好で、8月11日に環の平面上となります。これが2回目の消失です(1番上の図)
 そしてしばらくは、地球も太陽も環の平面の北側に位置します。これは丁度5月より前と同じ位置関係ですね(2番目の図)。消失とは直接関係ありませんが、9月2日、土星は衝を迎えます(太陽−地球−土星がほぼ一直線になり、一晩中土星が観測できる観測好期です)。
 このあと、地球は環の平面よりも図の左側へ先行します。環の平面の方は、11月19日に太陽の位置を横切り、太陽光が真横から照らす消失となります(3回目、1番下の図)。



 このあとは、さらに環の平面は図の左へと移動します。このときは環の平面をはさんで、北側に地球、南側に太陽が位置しますから、再び裏側照明となります。5月〜8月の裏側照明とは、太陽と地球の位置関係が逆になってますね(図の一番上)。 そして年が明けて2月12日、回り込んできた地球が、三度(みたび)環の平面を横切りまして環の消失となります。11月19日の消失とあわせて、4回目の消失となります(2番目の図)。ただしこのときには、地球から見て太陽と土星があまり離れてなく、観測は難しいです(図をよく見ると土星−地球−太陽の角度がほとんどないのですが、わかります?)。
 そして、'96年の5月頃には、環の平面が地球軌道から離れまして、一連の環の消失現象が完全に終了します(一番下の図)。このあとは、約15年間に渡って、地球、太陽とも環の南側に位置することになります(消失現象の時の土星の位置の図の(3)〜(4)〜(5)にあたります)。
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5.最後に

 なんとなく偉そうに書いてきましたが、実は私も'95年のこの現象を迎えて、初めてこれらの位置関係がわかりました。これらの図が、一連の消失現象の空間的な位置関係をイメージすることに、少しでも役立てられれば幸いです。
 なお、土星の環の平面が、地球軌道を横切るのに約1年かかります。この間に地球は太陽の周りを1周します。したがって、環の平面が横切り始めるときに、地球がどこにいるかのタイミングで、環の消失(地球が真横からみる)が3度になったり、1度になったりします。'95年〜'96年は3度のパターンでした。敢えて説明図を省略してありますが、よく考えてみましょう!(手抜きですみません)。
 もちろん、太陽が真横から照らす消失は、各期間に1度だけです。

 消失の日付や土星の物性値につきましては、「天文観測年表'95年版/地人書館」を参考にしました。ありがとうございました。
 なお、「地球の軌道面」と「土星の軌道面」には、若干の傾き(約2.5度)がありますが、「土星の環の平面」と「土星の軌道面」の傾き(約25度)に比較してかなり小さいため、図ではこれを表現していません。もちろん、説明の大半にも影響しないはずです。ご了承下さいませ。

1995.7.22 Nifty FSPACE 登録用に怪鳥記す。
1996.2.11 本ホームページ用に改編


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