惑星の新定義についての話題
2006年8月24日、IAU(国際天文学連合)の総会にて、惑星の新定義が決議されました。これにより、「惑星」というグループ分けから「冥王星」が外れ、「惑星」は、「水星」「金星」「火星」「木星」「土星」「天王星」「海王星」の8個となりました。
なお、「冥王星」は、従来小惑星だった「セレス」や「2003 UB313」とともに、「ドワーフプラネット(Dwarf Planet:小型の惑星という意味)」という新しい天体の分類に入ることになりました。
※この内容は、2006年9月2日に郷土の森博物館で行われた「星空観望会」で配布したパンフレット用に作成した内容を改変して掲載してあります。
※「2003 UB313」には「エリス(Eris)」という名前が新たに付きました。ただ、現在本文中は「2003 UB313」をそのまま使用しております。
■惑星の歴史
地球から肉眼で見ることのできる「水星」「金星」「火星」「木星」「土星」の5つは、古来から星座を形づくる星(恒星)の間を移動していく不思議な星として知られていました。「惑う(まどう)星」という意味で、日本や中国では「惑星」と呼ばれました(ちなみに英語では「Planet」(プラネット)といい、やはりギリシャ語で「さまよう人」という意味の言葉が語源となっています)。その後、「地球」を加えた6つの星は、太陽のまわりをまわっている星であることがわかり、そのような意味としての「惑星」が使われてきました。
その後、土星よりも外側をまわる惑星として1781年に「天王星」、1846年に「海王星」が発見されました。この時点で惑星は8個となったわけです。
(この間の1801年に、やはり太陽のまわりを回る天体として「セレス(ケレス)」という天体が見つかりました。火星と木星の間をまわるこの天体は、当初惑星であると考えられていましたが、大きさ(直径)が水星の約5分の1ととても小さいこと、その後同じような位置をまわる小さな天体がぞくぞくと見つかったことから、これらをまとめて「小惑星」と呼ぶことにし、「セレス」もこの仲間となりました)。
この後、惑星はしばらくの間発見されませんでしたが、1930年、アメリカのトンボーによって海王星の外側をまわる「冥王星」が発見されました。当初地球の半分くらいの大きさと推測されていたこの天体は、9番目の惑星として認識されました。ただ、軌道がかなりいびつな楕円形をしていること、軌道面(平面)が他の8つの惑星と違って傾いていることで、かなり「変わり者」の惑星でした。
近年、観測技術が進歩し、冥王星の軌道のそばやその外側に多くの小天体が発見されてきました。「エッジワース・カイパー・ベルト天体(EKBO)」とか「トランス・ネプチュニアン天体」と呼ばれるこれらの小天体は、これまでは「小惑星」のグループとされてきました。一方で、冥王星の方はというと、当初考えられていたよりもかなり小さく、直径は水星の半分以下(地球の5分の1以下)で、また質量も小さく、地球などのように「岩石でできた天体」というよりも、おもに「氷でできた天体」であると考えられるようになりました。このため、冥王星はこれら小天体の仲間ではないか、と考えられるようになりました。さらに、冥王星とほぼ同じかそれよりも大きいと考えられる「2003 UB313」という天体が発見され、「10番目の惑星?」と騒がれるようにまでなりました。そこで、そもそも「惑星とは何か?」ということを決めなければいけなくなったのです。
■今年8月の決議
当初、惑星をいくつかのグループにわけ、冥王星や2003 UB313などは「惑星の中の新しいグループ」とし、惑星の合計は12個に増えるという案が提出されました。しかし、これにはさまざまな反対意見が続出し、案自体が見直されることになりました。
その結果、冥王星は「惑星ではない新しいグループの天体」となり、この定義が決議とされました。これによって、太陽系の惑星は、水星、金星、地球、火星、木星、土星、天王星、海王星の8個となったのです。
■冥王星は「ドワーフプラネット」に!
今年の決議によって太陽系の惑星は次のようなもの(概略)と決められました。
- 太陽のまわりを回っていること
- 十分な大きさを持っていて、ほぼ球形であること
- 自分の軌道の近くの天体をなくしてしまっていること
これに該当するのが、先ほどの8個の惑星です。 冥王星は1と2にはあてはまりますが、3にはあてはまりません。冥王星のほかにも同じような軌道を持つ、同じような大きさの天体がたくさんあるからです。そこで、冥王星のような天体については新たに「ドワーフプラネット(Dwarf Planet:小型の惑星という意味)」という惑星とは別のグループをつくることになりました。今回は、「冥王星」と「2003 UB313」それに「セレス」がこの「ドワーフプラネット」に分類されましたが、今後も増える可能性があります。一方で、今回の決まりからは「惑星が8個から増えることは難しい」と考えられています。
「水・金・地・火・木・土・天・海・冥」と親しまれてきた9つの惑星。今回の決議で惑星は8個になってしまいましたが、それだけ太陽系のことが詳しくわかってきた、ということでもあります。もしかしたら、いつか将来、もっと外側に巨大な本当の「9番目の惑星」が見つかるかもしれません。みなさんも、天文学の進歩に注目していてくださいね。
■補足
- 「ドワーフプラネット(Dwarf Planet)」については、正式な日本語訳は決まっていません。「矮惑星(わいわくせい)」という言葉が便宜的に多く使われていますが、正式な用語ではありません。
- 「2003 UB313」は仮符号という番号で、正式な名前は近々決定することになりました。
※9/15追記:9月13日発行のIAUCにて、「エリス(Eris)」という名称に決まったことが発表されました。
- これまで使っていた「小惑星」や「彗星」は、まとめて「small solar system body(太陽系小天体)」というグループに入ることが定義されました。しかし、従来の意味での「小惑星」や「彗星」という用語は今後も使われます。
- この決議にともない、「冥王星」にも小惑星番号「134340」が与えられました。同様に「2003 UB313」にも小惑星番号「136199」が与えられました。ちなみに「セレス」は「1」で、「(1) Ceres」と表記されます。今後は「(134340) Pluto」「(136199) 2003 UB313」というような表記も見られるようになるかもしれません。
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