'96年9月27日に見られた月食の情報

 今年9月27日、北米で見られた皆既月食の情報です。なお本文書は、当会会誌「むぎ星」に掲載したものを、本ページ用に若干手直ししたものです。


 日本では久しく皆既月食は見られてませんが、今年9月27日、ヨーロッパや南北アメリカでは好条件で皆既月食が見られました。アメリカ支部の多田さん(ボストン)と、橋本さん(カリフォルニア)が、この月食を見て、その様子を簡単にレポートしてくれましたので、ご紹介致します。

 今回の月食が見られた範囲を右図に示します。大西洋沿岸で条件がよく、南米、北米東部、西ヨーロッパ、西アフリカで食が全て観測できるという条件でした。橋本さんの西海岸では、欠けながら月が昇り、皆既月食以降は全て観測できると言う条件でした。

 月食自体の規模は最大食分が1.25と中規模で、月は地球の影の北側を通過したことになります(右図)。

 なお、各図は、客星さん作成のソフト「LMAP」の画像を加工しております。


<報 告>

(以下、多田さんのメールから抜粋です。)

「こんにちは。月食は、ちょっと空が曇っていて残念ながらあまりきれいに見えませんでした。うちの窓からなんとなく眺めるだけになってしまいました。
 でもちらっと見たときは、かなり黄色かったような気がするんですけど。観測するつもりで見ていなかったんで、今一おぼえていません。どうもすみません。」

(以下、橋本さんのメールから抜粋)

「皆既月食、見ましたよ。クラスの友達にも言われたし、TVでも宣伝していたので、あまり期待せず『まー見てやるか』程度の気持ちで外に出て月を眺めていたら、思いがけずきれいでした。カリフォルニアは日の沈む時間がボストンのほうより遅いので(時差の関係で、東の方が夜でも私のところはまだ夕方だったんですよ)、月食の始まりは見えなかったんですけど、そのあとは、ずっときれいに見えていました。
 色は多分L=2ぐらいでした。基本的にオレンジ色で、とっても薄暗かったです。私は3年前に胎内で買ったあの双眼鏡をクローゼットの奥から引っぱり出してきて、自分の部屋から眺めていました。」

(なお、原文は日本語表記環境がないので、どちらもローマ字表記です。)

 橋本さんの報告の中に出てくるL=2とは、ダンジョンの尺度と言うもので、昔ダンジョンさんという人が皆既月食の明るさ(色)を調べる目安として設定したものです。以下のように定義されてます。

L=0
非常に暗い月食で、特に食の中心で月はほとんど見えない
L=1
暗い月食で、灰色または褐色がかり、細部は見分けにくい
L=2
暗い赤または赤錆色の食で、影の中心はとても暗く、影の周辺部は比較的明るい
L=3
れんが色の食で、通例、影の縁は明るいかまたは黄色い
L=4
非常に明るい赤銅色またはオレンジ色の食で、影の縁は青みがかって非常に明るい
注)
 上記は、「OBSERVING THE NEST TOTAL LUNAR ECLIPSE:1989 FEB20」The Journal Of The Association Of Lunar And Planetary Observers Vol.33,Num.1-3,P32 の記事中から怪鳥が和訳したものです。

 橋本さんの報告ではL=2なので、やや暗めの食と言う判断になります。多田さんは黄色がかっていたとのことなので、L=3に近かったのではないかと思います。
 この皆既月食の色というのは、月食毎にかなり変わりまして、最近では大気中の、特に上層の塵の量と関係があるのではないかと言われてます。例えばエルチチョン火山が噴火し、その噴煙が成層圏に達した1982年12月の月食では、ほとんど赤みのない暗い月食(L=0程度)でした。今回は目立った火山の噴火は特に無かったようなので、赤みがかった比較的ノーマルな月食になったのではないでしょうか。


日本における次回の月食

 日本では、1993年6月4日の月食以来、皆既月食が見られない状況が続いています(実際には同じ年の11月29日、北海道の東部で皆既月食が見られているが、条件は悪かったです)。この1993年の際には、フィリピンのピナツボ火山の噴煙の影響があり、1982年のものほどではないものの、かなり暗め(L=1〜2)のものでした。

 次回、日本で見られるのは来年、9月17日の明け方です。実に4年ぶりの皆既月食ですが、どのような色を見せるのでしょうか。

 1997年9月17日の月食データ
 食の始め   2時 8分
 皆既の始め  3時15分
 食の中央   3時47分
 皆既の終わり 4時17分
 食の終わり  5時25分
 月没  5時32分(東京)

月没以外のデータは、客星さん作のソフト「LMAP」によるものです。


<フリーソフト「LMAP」について>

 本ページの上から2つの図は、客星さん作成のフリーソフト「LMAP」に若干手を加えてて作成したものです。また1997年9月17日の月食のデータもこちらで計算しました。このソフトの作者の客星さん(竹迫忍さん)のホームページ
「古天文の世界へようこそ」はこちらです。古天文学について解説された必見のページです。客星さん、ありがとうございました。

 また本ソフトは、甲田さんの「古天文学と天文民俗学の部屋」のページの中の、古記録の検証に便利なソフトからダウンロードできます。


<お薦めリンク>



質問などメールはこちら



 天showのコーナーへ FASのホームページへ戻る