皆既月食の色(明るさ)報告

 2000年7月16日に起こった皆既月食の色(明るさ)について、当会ホームページを通じて集計したデータの報告です。
 観測にご協力いただいた皆様、ありがとうございました。


 7月18日までに確認したデータについて、この時点の判断で集計しました。

●総合評価

 過去の観測結果と照らし合わせるため、肉眼で感じたスケールを皆既中を通じた評価として報告して頂きました。前半のみ・後半のみの観測も含め、単純に集計したのが、次の結果です。

0.00.51.01.52.02.53.03.54.0合計平均
観測数0259.512.53520391.92

※今回1.5〜2という報告が1件あったため、L=1.5とL=2にそれぞれ0.5件として集計しました。


 左のグラフは、各L値の報告件数について、割合(%)で表示したものです。

 評価数では、L=2.0が最も多く12.5件、次いでL=1.5の9.5件でした。この他、L=1.0とL=3.0がそれぞれ5件で、かなり分かれた結果が得られました。

 個人的な意見を述べますと、月食としては暗い部類に感じたのですが、特に皆既開始時点や終了時点など、影の周辺部の色合いは結構豊富でした。この辺のどこに重点をおいて判断したかで、評価がかなり分かれたのではないかと考えられます。

 現段階の集計では前半のみ・後半のみのデータも合わせて集計してありますが、以上のような点を考えますと、若干分類して集計した方がよさそうだと感じてます。
 この点につきましては、こちらの不手際であいまいな集計をしてしまいましたので、一部の方に確認のメールを送信させて頂いております。お手数ですが、ご協力いただければ幸いです。またある程度確認できたところで、また集計させて頂きます。

●各時点での評価

 今回総合評価とは別に、皆既開始時・食の中央時・皆既終了時についても、同様の色(明るさ)の評価をお願いしましたところ、約4割の方からご報告頂きました。こちらについてまとめたのが以下の表です。

0.00.51.01.52.02.53.03.54.0合計平均
皆既開始時002375200192.05
食の中央時026521100171.41
皆既終了時000464210172.21


 左のグラフは、各時点におけるL値の割合(%)を表示したものです。

 開始時はL=2〜2.5が多く、平均も2.05となりました。

 一方食の中央では、L=1〜1.5が多くなり、L=0.5も2件の報告がありました。平均でもL=1.41と、開始時に比べて0.5以上暗く感じられてることがわかります。
 元々今回の月食は、月が地球の本影の中心付近を通過してますので、ある程度食の中央では暗く見えるのではないかと予想されてましたが、それが顕著に表れた結果となりました。

 一方、皆既終了時では、皆既開始時よりも明るい評価が多くなり、平均値としてもL=2.21となりました。前半の影と後半の影の中では、影に回り込む光が通過した地球大気の部分が大きく異なりますので、差が出る可能性もあります。この点については、また後日検討してみたいと思います。

 以上の結果を見ますと、食の中央では相当暗い月食だったものの、影の周辺部は比較的明るく、特に皆既終了時で明るく感じられたようです。総合評価の平均値L=1.92も、妥当ではないかと思われました。

●過去の月食との比較

 過去に怪鳥が呼び掛け、ある程度の報告数が集まった月食が2回あります。これらと今回の月食について比較したのが下の表です。

現象日時皆既開始時食の中央時皆既終了時総合評価
1990.2.102.3(7)2.1(9)2.2(6)※2.1〜2.3
1993.6. 41.5(6)0.4(13)1.7(16)1.1(13)
2000.7.162.1(19)1.4(17)2.2(17)1.9(39)

かっこ内は、評価数。    
※1990年は総合評価を集計せず。

 以上を比較すると、今回の月食は1990年よりは暗かったものの、1993年のものと比較すると、だいぶ明るかったと考えられます。各時点での評価を考えると、皆既開始・終了時では1990年とさほど変わらないものの、食の中央の付近では随分と暗くなったようです。

 これらから見ると、一見L=3以上の明るい月食がないように見られます。しかしこの間に起きた1997年9月の月食は、かなり明るかったとの報告がありました(当会福岡支部山崎氏:L=3.5)。この時は天候が悪く、日本では西日本のごく一部でしか観測ができず、データが収集できなかったのが残念でした。

 このようなデータを集計するようになり、数字上からも各月食毎に相当印象が違うことがわかるようになりました。次回皆既月食は2001年1月10日明け方に見られます。特に今回初めて観測された方は、次回も月食の色に注目して、今回と比較することでさらに楽しんで頂ければ幸いです。

●謝意

 まだ集計途中とはいえ、40人を越える方にご協力頂いたことに大変嬉しく思っております。本当にありがとうございました。
 月食の色の違いについては、研究している方はほとんどいないのが実状です。学術的な観測意義についてはまだまだですが、今回のような記録を残せたことで、何かに繋がっていけばと感じています。

 皆様のご協力、本当にありがとうございました。


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