98年1月9日の接食観測報告

 1月9日夕、稲城市・川崎市付近を限界線が通った接食の観測報告です。


 1月9日の夕方、関東地方などで接食という現象がありました。

接食とは

 接食とは、月の縁ぎりぎりに星が通過していく現象(本当は星をかすめて、月が通過していく現象)です。
 月の表面には山や谷があり、でこぼこしてます。このため、縁を星が通り過ぎると、星が山に隠れたりまた出てきたりで、明滅して見られます。
 これを地上で数百メートル〜数kmくらいの間隔をおいた複数の地点で観測すると、星が通過する高さが変わるので、山や谷の形が浮かび上がるのです。


上図 月の縁を星がかすめていく

下図 拡大図

   観測する地点によって、
   微妙に星が通り抜ける高さが変わる

 今回の現象は、おうし座 θ2星(78番星、ZC 671)という3.4等星が、月の南側をかすめていくというものでした。FAS府中天文同好会では、この現象を東京都稲城市内の3地点で観測しました。


観測者と観測地点:

佐藤(智) やや内側
佐藤(幹) 
寺久保  やや外側
地図はMapFan(C)Increment P Corp.より作成。


<観測結果(時刻は日本時JST)>

<佐藤(智)>

観測開始   17:27:00  
潜入     17:31:33.2
出現に気付く 17:38:44.0
観測終了   17:42:30

<佐藤(幹)>

観測開始   17:30:00
またたき   17:31:24.4(やや不確実)
潜入     17:31:34.3
出現     17:31:35.2
潜入     17:31:36.9
(この間現象は不明)
出現に気付く 17:41:18
観測終了   17:42:00

<寺久保>
観測開始   17:30:00
潜入     17:32:11.9
出現     17:35:23.1(かなり不確実)
(この間何度か出現・消失があったようだが、観測できなかった)
出現     17:35:33.8
(この間に潜入があったはずだが見逃している)
出現     17:36:19.5
潜入     17:36:21.2
出現     17:36:55.9
観測終了   17:40:00

<整約図>

 国立天文台の相馬さんによって計算された値を、怪鳥がグラフにしたのが下の図です。このグラフでは、山の形がわかりやすいように丸い月縁を直線にして表してるので、星の動きが曲がって表されます。
 当会の観測値は、下側の3本の曲線です。(上側の2本は、神奈川県の愛川町で観測された鈴木智さんが、掩蔽観測のメーリングリストJOINに報告されたデータです。)
 相馬さん、鈴木さん、掲載へのご快諾ありがとうございました。

(灰色の太い帯は、天文観測年表(地人書館)に掲載された予報の山の形を読みとったものです。)

 これからもわかるように、より外側(グラフでは上側)の寺久保さん(赤色の線)は、途中なんどか見逃しながらも、何回かの出現・潜入を捉えてますが、月の内側に近い佐藤(幹・下の緑線)と佐藤(智・ピンク線)は、最初の方の潜入だけで、あとは観測できませんでした。

 実際に観測して見ると、今回は月が満月に近く、月面はほとんどが明るく輝いていたこと(特にグラフの左側)、山の頂きがちょうど星と同じ明るさに輝いていて紛らわしかったことなどで、難しかったというのが実感でした。星の明るさは、接食としては明るい部類で、実際にも観測の初めは大丈夫だと感じてたのですが、なかなか難しいものでした。


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