ヘール・ボップ彗星起源の流星群について

 1997年の春、大彗星となったヘール・ボップ彗星に関連した流星についての話題です。ただし、結論から言いますと出現する可能性は低いです。
 残念ながら、うまく表現できた記事ではないと思いますが、なんとなく雰囲気が伝わればよいかなぁと思い、公開致しました。


彗星のまき散らした塵

 この春、ヘール・ボップ彗星は立派な尾を見せました。白っぽい尾は、太陽で熱せられたヘール・ボップ彗星の表面が溶けて、ガスと一緒に吹き出した塵が太陽光を反射していたものです。
 このような尾を作る塵は非常に小さなものですが、一般的に彗星からは、もう少し大きめの砂粒〜小石程度のものも放出されてます。尾を作る小さな塵とはかなり違うものですが、これがたまたま地球の大気中に飛び込んでくると、流星となって観測されたりします。
 逆に流星というのは、その大半は何らかの彗星から放出された砂粒が起源になってると考えられています。

彗星軌道と流星

 彗星から放出された砂粒は、よく、放出後もその彗星の軌道上にとどまって存在していたり、あるいは尾を作る塵と同じように太陽と反対側に移動していくと思われがちです。が、これは間違いで、本当は放出されたあとも彗星とほとんど同じように、太陽系のまわりを移動(運動)してます。彗星から放出されたわずかなスピードで、少しずつ彗星から遠ざかる程度です。
 したがって、ある彗星が起源となる流星が流れる条件には、  ということが必要になります(また上記が当てはまっていそうでも、流星が見られない場合もあり、観測してみないとわからないのが現状です)。

ヘール・ボップ彗星軌道と地球軌道の接近の程度

 ヘール・ボップ彗星自体は、最も地球に近づいたときでも約1.3天文単位と、かなり遠かったわけですが、彗星の軌道自体は、地球軌道にやや近づきます。位置的には、地球が1月2〜3日頃に通過する場所で、約0.12天文単位です。
 これが流星が流れるほどの距離かどうかと言うと、残念ながら可能性は低い方の部類になります。例えば、8月のペルセ群はスイフト・タットル彗星が起源ですが、軌道の接近距離は約0.01天文単位ですし、先日話題になり来年大出現が期待される11月のしし群では、その起源のテンペル・タットル彗星の軌道とは約0.008天文単位まで近づきます。これから比べると、ヘール・ボップ彗星の場合はちょっと離れてしまってます。

ヘール・ボップ彗星から放出された砂粒は存在するか?

 ヘール・ボップ彗星は地球との軌道との接近箇所を、1997年の5月6日〜7日頃に通過しました。地球が1998年1月2日〜3日頃に通過するときには、これから約8カ月たってまして、彗星は約3.7天文単位の遠い位置にいます。
 例えば1年前に彗星から放出された砂粒があったとしても、地球軌道付近を通過するときの彗星本体との時間差はせいぜい数日程度です(のようです)。このため、今回の接近でヘール・ボップ彗星が放出した砂粒は、地球が1月に通過する際、その場所には全く存在していないことになります。

以前に放出された砂粒の存在

 とは言っても、この条件は他の流星群を形成している彗星の場合と同じです。他の流星群の場合、なぜ彗星から離れた場所でも砂粒が存在するかと言えば、何度も太陽のまわりを周回することで、長期間に渡って砂粒を放出してきたからです。周回をくり返すと、砂粒と彗星の微妙な公転周期の差も手伝って、彗星よりも前や後に多少離れて砂粒が帰ってくるようになります。
 毎年見られるペルセ群は、おそらくスイフト・タットル彗星が非常に多数回にわたって周回した結果、軌道上にまんべんなく砂粒が回っている状態になった考えられます。また、しし群では、まだ砂粒の分布が均一ではないので、彗星が接近する約33年ごとに流星が多く見られることになっているのでしょう。

ヘール・ボップ彗星も周回する

 ここまでの話では、ヘール・ボップ彗星からの流星はかなり否定的だと言うことになります。
 ただ、ヘール・ボップ彗星も数千年の周期で太陽のまわりを回る軌道を持っていて、少なくとも数千年前に、一度は太陽に(地球軌道にも)接近しているようです。
 ではこの時に放出された砂粒はどうでしょうか。周期が数千年なので、砂粒が戻ってくる時期の誤差も大きくなります。そういう意味では可能性を全く否定することはできないです。
 また砂粒と彗星の軌道の誤差も当然見込まれます。軌道間の距離約0.12天文単位というのもヘール・ボップ彗星自体の軌道の場合で、戻ってきた砂粒との距離がどのくらいになるかは、はっきりとはわかりません。偶然に、接近する方にずれれば流星が見られる可能性はあるでしょうが、もちろん逆もあるわけです。

1997年の方が条件は良かった

 実は時間差だけから考えると、1997年の方が彗星通過の4カ月前ですので、8カ月後となる1998年より条件は良かったと思います(ヘール・ボップ彗星自体がまだ暗かったので、あまり騒がれませんでした)。
 実際はというと、ヘール・ボップ彗星の軌道から予想される輻射点の近くに、輻射点を持つ流星が流れたという観測はありますが、ごく普通に見て確認できるほどの流星は流れませんでした。(輻射点:地上から見たときに流星が地球に飛び込んでくる方向。流星が流れてきた方向へまっすぐにたどると、群流星の場合、この輻射点にたどり着きます。)

さめた目で見つめる

 あれほどの大彗星ですから、それに伴う流星が見られたらいいなとは、私も思います。けれども、可能性はやはり相当低いと思います。当会では、見えたらいいな程度の気持ちで、夢を持って眺めるつもりでいます。
 おりしもこの頃はしぶんぎ群(りゅう座流星群)の極大に当たりますので、その観測をメインに1月2〜3日と3〜4日の2晩、見ようと思います。特に3〜4日の晩はこのしぶんぎ群の極大に当たり、この群の流星が多く(数十個/時)流れるので、深夜から明け方にかけて目を楽しませてくれると思います。

 もし見てみようと思われるのでしたら、しぶんぎ群の流星を見るつもりで、それにヘール・ボップ関連流星が多少混じってたくさん流れたらめっけもん、ぐらいの心づもりで臨まれるのがよいかと思います。

輻射点

 上記のように、彗星関連流星群の予報輻射点と、しぶんぎ群の輻射点は非常に接近しています。流れる様子を模式的に図に表しましたが、普通に見るだけでは、区別は難しいと思われます(当会の観測でも、これらは区別できないと思ってます)。
 熟練の観測者や写真・ビデオ観測などによって、彗星関連群が流れたことが確認できましたら、こちらでお知らせいたしますね(そしたら、その晩に見た流星の一部は、ヘール・ボップ彗星に関連した流星だったかもしれないと思って下さい・・・というのはどうでしょう?)。

 ちなみに、上図の流星の色は、模式的に区別して色づけしているだけですので、勘違いのないように(上くらいに色が違えば、区別も簡単なんですけどね(^^;)

 なお、ヘール・ボップ彗星関連流星の予報輻射点は東京近郊地区流星観測者会のホームページにありますヘールボップ彗星を母彗星とする流星群についてに記載されたものを用いました。


質問などありましたらこちらまで。

メールはこちら


 天showのコーナーへ戻る  FASのホームページへ戻る