2000年のジャコビニ流星群の情報

 ジャコビニ流星群は、時折多くの出現を見せる流星群です。今年はあまり出現する可能性は高くないのですが、興味があってかつ気合いのある方はぜひ観測してみましょう。


<ジャコビニ群の火球?>

 10月7日18時10分頃、関東地方南部の上空にかなり明るい
火球が出現しました。
 怪鳥はこの火球のごく一部(大半は雲の中だった模様)を伊東市から観測し、ジャコビニ群の流星だったと判断してますが、他の地点からの報告からは、違う群だった可能性も高いです。もしご覧になった方は、ぜひご報告下さい。
 もしもジャコビニ群に属する火球だとすると、ジャコビニ群としては大変珍しい流星が流れたことになります。

<ジャコビニ群は若干出現>

 上記の火球が本当にジャコビニ群であるかどうかは、今のところまだ判明していませんが、7日の夕方から夜にかけて、1時間数個ほどの出現があった模様です。当日は全国的にあまり天気が良くはなく、条件の好い空での観測がなかったのが残念です。
 当会では、静岡県伊東市でトータル1時間程観測しましたが、残念ながら正式観測中には流れませんでした。観測時間以外では、上記の流星(火球の一部)を含めて3個のジャコビニ群を確認しました。

●ジャコビニ群出現時刻

 18時12分 0等   (他の地点で火球として見られたもの)
 18時31分 2等
 21時10分 0等   ※それぞれ出現時刻には若干の誤差があります。


<以下は事前情報です>

<ジャコビニ群概要>

 ジャコビニ流星群は、ジャコビニ・チンナー彗星(ジャコビニ・ツィナー彗星などとも表記されます)を母天体とする流星群です。この彗星から放出された砂粒が、地球に飛び込んできて流星となるものです。

 母天体のジャコビニ・チンナー彗星は約6.5年で一回りして太陽の近くに戻ってくる彗星です。周期に「0.5年」の半端があるため、一回りごとに帰ってくる時期が半年ずれ、春に戻ってくる場合と秋の場合が、交互になります。
 地球は10月8日〜9日ころ彗星軌道と接近しますので、秋に戻ってくる2回りごと(13年ごと)に、彗星と地球は接近します。

 流星の元になる彗星から放出された砂粒は、彗星の近くを一緒に移動してますので、彗星が地球に接近するときには、彗星の前後に砂粒もたくさん戻ってきます。この砂粒の流れの中を地球が通過すると大出現となるため、13年に一度、流星の大出現するチャンスが巡ってくるわけです。接近した年と出現状況は、下記の通りです。

彗星の地球軌道
への接近
接近距離
(AU)
流星
観測年
流星の出現状況概要タイムラグ
1926.12.180.0011926
小出現
69日前
1933.07.210.0071933
ヨーロッパで流星雨
80日後
1940.02.230.0031939

136日前
1940

229日後
1946.09.240.0031946
アメリカで流星雨
15日後
1953.04.230.0041952
電波観測で大出現
195日前
1953

170日後
1959.10.310.0581959

22日前
1966.04.020.0611965

175日前
1966

191日後
1972.08.110.0011972
電波観測で出現
59日後
1979.02.180.0031978

133日前
1979

232日後
1985.09.110.0341985
日本で数100/時
27日後
1992.04.190.0401991

193日前
1992

172日後
1998.11.270.0401998
日本で約100/時
50日前
1999
日本で約30/時
316日後
2000?

681日後

 タイムラグ(彗星が通過してから地球が通過するまでの日数)が13年おきに小さくなり、そのうちの4度、大出現を起こしていることがわかります。

<昨年の予想外の出現>

 一昨年(1998年)に13年ぶりの大出現をして、誰もがほとんど流れないだろうと予想した昨年(1999年)、1時間に20〜30個という予想外にまとまった出現を見せました。彗星が通過してから実に316日も経った後の出来事でした。

<今年も可能性は0ではない>

 実は表からは省きましたが、1997年にも1時間あたり数個といったごく小規模な出現が確認されています。これは彗星から放出された流星のもとになる砂粒の分布が、かなり拡散してきたと見られてます。この点から見ても、2000年の今年、多少の出現はあると思います(ただ、見て楽しい程流れるかどうかは、わかりません)。

 一方、流星の粒が彗星からかなり離れると、木星の重力の影響を彗星とは別に受け、軌道がかなり変わったり、接近する時期が変化したりすることがあります。
 近年目立ったのは1998年に出現した、ポン・ウィネッケ彗星に関連する流星群です。彗星は1996年に、地球軌道から少し離れた場所を通過したのですが、それから2年も経過してからかなりの大出現を見せました。これは彗星からかなり前(この場合前世紀の半ば頃)に放出した粒が、流星となって出現したらしいことがわかってきました。

 ジャコビニ群の場合も、怪鳥の怪しい計算(笑)では、今世紀の始め頃に放出された砂粒が、彗星からだいぶ遅れて今年頃、地球軌道にやや接近しそうです。見事な出現にはならないでしょうが、「1時間に数個程度は流れるかもしれない」と、期待してます。

<注目時期、輻射点など>

 輻射点はりゅう座にあり、夕方から宵にかけて北西の空に位置します。流れた流星を逆にたどると、この方向に集まることになります。
 輻射点は、深夜になると地平線近くの低い位置になり、見られる流星数は物理的にとても少なくなります。このため、夕方から23時頃までが勝負となります。
 残念ながら今年は、南の空にある月明かりの影響を受けます。天頂よりもやや北側の空を見る方がよいでしょう。

 ジャコビニ群の流星はふわーっとした感じでゆっくりと流れますので、こんな流星が夕方、北西の方から流れてくるように見えたら、ジャコビニ群だと思って間違い有りません。

 一般的に予想される極大は、10月8日の午前中(1998年の極大から計算)や、10月8日夕方(彗星軌道から計算)などです。また怪鳥の怪しい計算からは、少し早まって10月7日の夕方になる可能性もあると思ってます。したがって、10月7日の夜、10月8日の夜の2晩が観測チャンスでしょう。

 期待度は非常に薄い流星群ですが「流れないことを確認すること」も重要な観測となります。もしよろしかったら、空を見上げてみてはいかがでしょうか。

 FAS府中天文同好会では7日の晩と8日の晩に、観測する予定です。観測できましたら、こちらにご報告致します。


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