リニアー彗星(1999J3)からの流星群

 1999年11月12日明け方、地球がリニアー彗星(1999J3)の「軌道」のごく近くを通過します。彗星から放出された流星物質が存在すれば、流星群が見られる可能性があります。


<リニアー彗星(1999J3)概要>

 リニアー彗星(C/1999J3)は5月に「The Lincoln Near Earth Asteroid Research」プロジェクトにより発見された彗星です(リニアー彗星と呼ばれる彗星は非常に多く存在するので、ご注意下さい)。10月に入って地球に比較的接近し、約8等の明るさで見られてましたが、急速に南下して、現在は北半球からは観測不能となってしまいました。

 この彗星は地球に非常に接近する軌道を描いていて、もしあと40日遅くやってきていたら、地球に約180万kmまで近づいて0等の大彗星として見られたことでしょう。

<流星群の可能性>

 既述の通り、この彗星軌道は地球と非常に接近しています。彗星は10月3日にこの地球軌道との交差部分を通過しました。地球は約40日遅れて、11月12日4時40分頃この場所を通過します。軌道の接近距離は約0.012AU(約180万km)で、月までの距離の約5倍程度の近い場所です。
 一般的には0.05AUよりも近づくと、流星出現の可能性が持ち上がります。ただし流星が出現するためには、彗星から放出された流星の元になる砂粒が広く分布することが必要になります。一般的な新彗星は太陽に一度しか近づかないため、この砂粒が彗星のごく近傍にしか存在せず、流星が出現することはまれです。

 これに対して太陽の周りをまわる周期彗星の場合には、過去に太陽に接近したときに放出された砂粒が、周回する間に彗星から比較的離れて、流星群が見られる可能性が大きくなります。

<過去に太陽に接近している可能性大>

 リニアー彗星(1999J3)も発見当初は、放物線軌道を描いて今回一度きりの接近だと思われてました。が、その後の詳しい観測により、非常に細長い楕円軌道が計算されました。これは、今回の太陽への接近時に木星の重力などによって曲げられたものではないそうで、過去に数回太陽へ接近している可能性が高いとのことです。ただし、周期は非常に長く、6万年〜7万年です。
 過去に1度でも太陽に近づいていれば、そのときに放出された砂粒が彗星よりもだいぶ離れて(時期がずれて)帰ってくる可能性が高くなります。今回は彗星通過から40日後とかなり近い時期に地球も通過するため、流星の出現の可能性があるというわけです。

<他の流星群との比較>

 このような超(?)長周期彗星から流星群が出現したことはほとんどないため、少々無理はありますが、現在見られている流星群の中でも母天体の周期が比較的長いペルセウス座流星群しし座流星群と比較してみましょう。

流星群名・母天体名
・周期
該当年彗星通過
との日数差
軌道間距離流星
出現状況
ペルセウス座流星群
スイフト・タットル彗星
周期:約130年
1991年約500日前0.000012AU約2千kmHR=数百
1992年約140日前HR=数百
1993年約220日後HR=数百
しし座流星群
テンペル・タットル彗星
周期:約33年
1966年約560日後0.0020AU約30万km大流星雨
1997年約100日前0.0069AU約100万kmHR=数十
1998年約260日後HR=数十〜数百
1999年約630日後
リニアー彗星(1999J3)
周期:約7万年
1998年約320日前0.012AU約180万km特に確認されず
1999年約40日後

 ペルセ群の場合、彗星軌道とはとても接近してましたが、出現は1時間あたり(HR)数百レベルどまりでした。しし群では軌道はペルセ群より遠いのですが、1966年などは大流星雨が見られています。ただしこれらの彗星は、惑星の重力の影響で若干軌道が変わるため、一概には比較できません。

 リニアー彗星の条件は、これらの群のケースより距離は離れているものの、彗星通過とのタイムラグは40日と短いため、彗星に比較的近い濃密な砂粒の帯の中を、ちょっとでも地球がかすって通過すれば、多少の流星が出現する可能性があるというところでしょうか。
 しかし約7万年というとても長い周期を考慮すると、放出された砂粒は数年の誤差を経て帰ってきてもおかしくありません。しかしながら昨年など、特に流星が突発出現したというような記録もなく、これはマイナス材料の一つです。

<輻射点など>

 彗星軌道と地球軌道の交差する部分を地球が通過するのは、11月12日明け方4時40分頃です。したがって極大もこの頃が予想されます。
 もし流星が流れた場合の輻射点は、おおくま座の北斗七星のひしゃく部分です。明け方は北東の空に上るので、この方向から流星が流れてくるように見えたら、リニアー彗星からの流星群の可能性が高くなります。

 予想される流星の速度はペルセ群とほぼ同じ程度で、やや速めの流星が流れるでしょう。

 ということで流星雨とまではいかないでしょうが、今まで見られてない流星群が今年だけ観測される可能性があります。気合いがあれば、11月12日の明け方、流星が流れてないかどうか、観望してみてはいかがでしょうか。



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