祖母の見た皆既日蝕

 Nifty-serveのSpace Forumにupした、祖母の皆既日蝕体験についてのコラムです。


【祖母の幼少の話】

 先日タイ日蝕から帰って、リトル(怪鳥の嫁)を中心に佐藤家では日蝕の話題で持ちきり。そんな中、祖母が皆既日蝕を経験した、と言う話が出たとリトルから聞きました。
 この話、最初に私が聞いたのは随分昔の話だったと思います。私が初めて日蝕を見た頃だったか・・・。1988年の小笠原沖日蝕から帰った時も、確か話題にのぼりまして、「皆既日蝕は本当に真っ暗になるのかい?」と聞かれ、「夕方くらいには暗くなったよー」と話して、祖母の体験を聞いた気がします。
 それは祖母がまだ幼少の頃、家の近くにいた祖母は、昼間なのに真っ暗になったので、びっくりして慌てて家に帰って来てしまったのだそうです。「これは、きっと皆既日蝕だったんだろうねー」と言ってました。(ちなみに祖母は1908年生まれです。)
本当に皆既日蝕なら面白いなぁと思うものの、当時は祖母の幼少の頃の日蝕なんて調べるすべを知りません。このため、いつしか記憶から消えていた話題だったのでした。ところが最近は、客星さんの作られたとってもありがたいソフト、EMAPがあるじゃないですか。これなら祖母の幼少の頃に起きた日蝕は全て検証出来ます。そこで、今回、祖母の故郷の三重で見られる日蝕を調べてみました。
 ところが、祖母の幼少の頃に三重で見られたそれらしき日蝕はありませんでした。皆既にならなくても食分の深い日蝕はないだろうか、と調べてみるのですが、それもあまり芳しいものはありません。やはり祖母の思い違いか、あるいは、にわかに厚い雲に入ったかで、たまたま暗くなっただけなのでは?と、一度は判断したのでした。

【祖母の祖母が皆既日蝕を?】

 ところが、リトルが聞いた話によると、「家に帰ってきたら、おばあちゃん(私の祖母の祖母・・・ひいひいおばあちゃん ですね)に、『それは太陽が何かに食べられちゃったんだよ。でもすぐ元通りに なるから心配ないよ』って言われてね。」とのこと。
 ここでふと、祖母の祖母が皆既日蝕を見た可能性はないか?と言う考えが浮かびました。もし見てたら、その経験を祖母に話したのではないかと。そこで、再びEMAPでこれを調べることにしました。
 するとどうでしょう!1852年12月11日、確かに皆既日蝕が起こりました。皆既線は山陰地方から東海地方へ抜けていきます。祖母の故郷の三重でも、2分弱の皆既日蝕になるではないですか(下図参照−図は
客星さん作「EMAP.EXE」にて作成し、手直しております)。





 祖母の記憶によると、祖母と、祖母の祖母との年齢差は67。と言う事は、1841年頃に祖母の祖母は生まれた事になり、1852年は11歳頃。これは、この皆既日蝕を見た可能性はかなりありそうです。祖母の祖母がこの皆既日蝕を体験し、そのことを覚えていた。そして、孫の体験に、自分の体験した現象と同じ現象だったのだろうと判断して、あのように答えたのではないかと。あるいは、もしかしたら祖母の祖母は、自分の見たものが皆既日蝕だったと言う事も知っていたのかもしれません。それを幼い孫に、優しく話してあげたのかもしれないですね。
 いずれにしても、真実は祖母の祖母のみぞ知る、なのですが(^^)。

【祖母は不満顔】

 この話を祖母にすると、「そうだったのかねー」と少々不満げに笑ってます。でも「こんな星好きの孫が出来るのなら、きちんと記録しておいたのに」と笑いながら話す祖母に、もっと色々聞き出してやろうと思うの自分なのでした。
 祖母は結構色々なことを覚えてます。「隣村の山に向かって火の玉が飛んだ」なんて言う事を昔聞いた事があります。これはもしかしたら「隕石落下」か?とか思うのですが、何分、時期も正確な場所もわかりませんので(^^;。まぁなんかの折にあの辺りから隕石でも見つかったら、「祖母の見たものかも」と思う事にしようと思ってます(^^)。最近、昨年の2月に結婚した妹と入れ替わって、リトルと言う新たな話し相手が出来たので、なにかの話題の折に今まで聞いた事の無い話が祖母の記憶から出て来るんじゃないかと、そう密かに期待したりしてます。

【おわりに】

 これをNifty-serve の Space Forum に書き込んだ11月初旬は、祖母はまだ元気だったのですが、その後急に体調を崩し、昨年12月21日、急逝しました。祖母の四十九日の法要を記念してここにupさせて頂きました。(1996.2.12 怪鳥記す)



 感想をお寄せ下さいませ。メールはこちら


<フリーソフト「EMAP」について>

 上記図は、客星さん作成のフリーソフト「EMAP」に若干手を加えてて作成したものです。客星さん、ありがとうございました。なお、作者の客星さん(竹迫忍さん)のホームページ
「古天文の世界へようこそ」はこちらです。古天文学について解説された必見のページです。

 また本ソフトは、甲田さんの「古天文学と天文民俗学の部屋」のページの中の、古記録の検証に便利なソフトからダウンロードできます。


 このページの先頭に戻る 天showのコーナーへ戻る FASのホームページへ戻る